国際宇宙ステーション(ISS)で日本人初の船長を務め、先日(2014年5月14日)地球に帰還した宇宙飛行士の若田光一さん。この本は、その若田さんが2009年にISSで行った実験を紹介するDVD付きの本です。
第1章では、地球を回る数々の衛星や、重力のない宇宙空間、地球を脱出して宇宙へ行くための速度、ISSなどがイラストと写真で説明されています。
第2章は本書のメイン、宇宙実験です。実験テーマは一般から募集したものなので、空飛ぶじゅうたんに乗れるのか、服はきちんとたためるのか、目薬は差せるのか、綱引きするとどうなるのかなど、素朴な疑問ばかり。主要な実験については、結果を3つの選択肢から予想をさせて、次ページでその答えと原理が説明されています。クマとウサギのキャラクターが若田さんに質問する形式で進行し、付録のDVDでは各実験に対応する映像を確認することができます。
読者対象は小学校高学年〜中学生。難しい漢字にはルビが振られていますが、作用・反作用の法則や、運動の法則、ベルヌーイの法則といった専門的な用語や原理が出てくるうえに、2色刷りのやや地味な作りなので、本だけで小学生が内容を理解するのは難しいかもしれません。そこでDVDの出番。字で読んだだけではピンとこない実験結果も、映像で見ると納得できます。本を読んで予想し、DVDで結果を見て、また本に戻って解説を読む、といった行き来を繰り返せば、理解が深まることでしょう。DVDだけなら小学生低学年から十分に楽しめます。
無重力状態の宇宙に関心を持ち、普段私たちが重力の影響を大きく受けていることを知る、よいきっかけになるDVDブックです。
科学読物研究会 片神貴子