イワシ、サンマ、アジ、サバのくらしと一生を通して、魚がどういう生き物で海でどんな暮らしをしているのかを教えてくれる読み物です。
魚は、人間のように寒さや暑さを防ぐ家を作ることも作物を栽培することもできません。ですから、季節に応じて棲み家やエサを求めながら海を回遊しています。では、広大な海の温度(水温)の分布はどうなっていて、どんなところにエサがあるのでしょう?また、なぜ多くの魚は群をつくって泳ぐのでしょうか?
本書は、イラストと平易な文章で、海水温や海流の様子を示しています。また、稚魚のエサとなる植物プランクトンの発生や、食物連鎖と分解によって栄養源が循環するシステムを説明しています。更に、魚には水の動きを感じる「感丘」という器官があって、敵から身を守りながら工夫して泳いでいること、その魚を捕るための漁法についても詳しく教えてくれます。
日本では、イワシやアジ、サバは縄文時代から、サンマは江戸時代から食べられていたとのこと。「さばを読む」の語源や、落語の「目黒のさんま」の話など、文化とのつながりも魚への興味を深めます。また、冒頭で東日本大震災に触れ、日本の海の豊かさと漁業で生きる人々の誇りと強さを伝えています。
A5サイズのハードカバー。140ページほどありますが、文字が大きく全ての漢字にルビが降ってあるので、小学校低学年でも大丈夫です。
(科学読物研究会 中川僚子)