表紙には、ひとかたまりに盛られたカラフルな粉が、いくつも整然と並んでいる。まるで化粧品のアイシャドウやファンデーションの原料のようだ。どれもすべて、日本各地でとれた土。黄緑色や水色、うす紫色やピンク色の粉も本当に自然の土なのだ。
庭や畑で土をひとつかみ拾ってきたら、紙に広げて乾かす。こうして集めた土が、日本地図の上にちりばめられている。たとえば、北海道の地図の上には黒、白、灰色など62か所の土が紹介されている。東北地方は66か所、関東は62か所、中部は77か所、北陸は51か所、関西は71か所、中国・四国は79か所、九州は63か所、南西諸島は40か所、どこの土もすべて色が違う。そして、なんと、1つの村だけで24種類以上も、いろいろな色の土が見つかる場所があるそうだ。そんな石川県の小さな村や、ピンク色の畑の土があるという島根県の町には、ぜひとも行って、この目で確かめたくなる。
土を集めてコレクションにする方法ばかりでなく、土で紙を染めたり、絵具やパステル、クレヨンを作るといった、土の色の楽しみ方もていねいに紹介されている。
色の違いを決める主役は、鉄だ。土の中にどのくらい含まれているか、含まれている鉄は酸素と結びつきやすいか、結びつきにくいか、そうした条件の組み合わせ方の違いで色が変わる。厚さ1センチの土が作られるには100年以上もかかる。こうした土の奥深い魅力に気づくことができ、実際に身のまわりの土の色を確かめたくなるこの本は、子どもから大人まで体験とセットで楽しめる本だ。
科学読物研究会 坂口美佳子