もし「みずとはなんじゃ?」と幼い子どもに問われたら、どう答えればいいでしょう?
水は私たちの生活の中で、なくてはならない大切な存在です。でも、その性質を幼い子どもがすっと理解できるように、わかりやすく正確にやさしい言葉で伝えるのはそう簡単ではありません。
ところが、その問いに対して、この本はしっかりこたえてくれますので、安心して手渡すことができます。
水の1番目の性質を「水は忍者のように、役者のように何度も姿を変えることができる」と子どもがイメージしやすい言葉で言い切り、2番目の性質は「地球の生きものの命を保つための料理人のような、医者のような働き」、そして3番目の性質は「クーラーのような、ふとんのような働き」と続き、最後に「水の力を守り、生きものみんなが生きていけるよう努めましょう」と地球規模の大きなスケールで、子どもたちに未来を託して終わります。
この絵本は、かこさとしさんの最後の作品となりました。絵の中には、かこさんの作品の登場人物や絵のモチーフなど、絵を描かれた鈴木まもるさんからのオマージュがそこここに見られます。かこさん自身がいつまでもいつまでもこの絵本の中で生き続け、あたたかいまなざしで子どもたちを見守ってくれるような気がします。
幼い子どもたちが科学的なことに出会うときに最初に手にとって、成長の過程で何度も何度も読んでくれるような本です。
科学読物研究会 市川雅子