何千万年も何億年も時を越えて来た「化石」。方解石化(ほうかいせきか)したアンモナイトの化石を手に取ってみるとずっしりと重くて、ひんやりと冷たく、そして、美しい。この化石は、生きていた時のかたちのままに石に置きかわっています。そのおかげで、私たちは、大昔のアンモナイトの姿を見ることが出来るのです。
どんなふうに生きていたのでしょう?科学的な興味に加えて、素晴らしくて神秘的な「宝もの」だと感じます。
この本のタイトルの『海辺の宝もの』とは、海辺の地層から発掘される化石のことなのです。主人公は、メアリー・アニングという女の子。今から200年くらい前、イギリスの貧しい家に生まれました。
メアリーが11歳のとき、父親が病気で死んでしまい、3つ上の兄ジョセフのわずかな給金だけでは家族3人は食べるものにも困ってしまいます。そこで、メアリーは学校をやめて、大好きだった父から教えてもらった「化石掘り」を仕事とします。相棒の犬トレイと一緒に黙々と化石を集めては手入れをして、観光客や町の人、そして学者たちにそれを売って、家族の生活を支えました。
でも、メアリーはお金をかせぐためだけに化石を掘っていたのではありません。つきることのない化石への興味と情熱につき動かされるように、女性でありながら、重労働で危険な化石掘りに没頭(ぼっとう)しました。化石に関する知識や観察する力は並外れていました。学者にも負けないくらいです。いつもメアリーは細心の注意を払って根気強く化石を採集(さいしゅう)しました。そして、ある時、とうとう驚くような大発見をするのです!
メアリーの発見した、おびただしい数の化石は大英博物館を始め、世界中の博物館などが所蔵しており、これらの化石は科学者たちの研究に大いに貢献(こうけん)しました。
さて、皆さんがこの本を読む楽しみがなくなってしまいますので、あらすじの紹介はこのくらいにしておきますが、この本の中のメアリーは、生き生きとして楽しそうです。読んでいるとすっかり引き込まれてしまって、メアリーとともに化石について考え、観察し、喜び、わくわくしてしまいます。
科学読物研究会 市川雅子