「水って高いほうから低いほうへながれるんでしょ?」「よじのぼるなんておかしいよ!」子どもたちは腑に落ちない様子。この本には、よじのぼる水の実験が紹介されています。ティッシュを持ち上げて、ティッシュの下の部分を水につけると・・・。見る見るうちに水はよじのぼっていきます。
学習指導要領によると、分子は中学生から教えることになっています。しかし、この本は、まず予想を立てて、実験してその結果を確かめながら読み進めるようになっているので、小学校高学年からでも楽しめるでしょう。実験は、1円玉をつぎつぎに水に浮かべるなど、身近な材料でできる上に、詳しい方法がていねいに書いてあるので、だれでも実験ができます。体験と本の間を自由に行き来することで、体験も本の魅力も大きく膨らむのは、子ども向けの科学の本ならではです。
本物を1億倍に大きくした水の分子は、その姿がかわいらしくて、「赤パンツくん」というニックネームがついています。本のあちこちに登場して、目には見えない分子の動きをイメージする手助けをしてくれるので、毛細管現象、表面張力、洗濯物が乾き、氷が水に浮き、雪の結晶が6角形といったふだん見慣れたさまざまな現象の仕組みがわかります。子どもばかりでなく、大人も知らないことを知る楽しさにワクワクしてきます。
後半には、大人向けの解説が載っていて、さらに踏み込んだ内容となっています。理系ではなかった人も、「そうだったのか」と自然の仕組みが分かり、知る楽しさを味わうことができるでしょう。子どものためのいい科学の本は大人のための入門書にもなります。
『もしも原子がみえたなら 新版』板倉聖宣/著 さかたしげゆき/絵 仮説社 もあわせてどうぞ。
科学読物研究会 坂口美佳子