日本水産学会監修「ベルソーブックシリーズ」の1冊。単行本の読み物です。普段、何気なく口に運んでいる魚卵も、大きさ・数・形・構造を詳しく調べてみると、魚種によって千差万別であることが分かります。水に浮かぶもの沈むもの、球形だけでなく長円形や楕円形の卵もあります。電子顕微鏡で拡大すれば、小さな粒の表面に芸術品のような幾何学構造が見えてきます。どの卵にも、親が託した生き残るための工夫が詰まっていることが分かります。
多くの魚は卵を産みっぱなしにしますが、中には巣を作ったり、卵を持ち運んだり、カッコウのように他の魚に卵を託す親魚もいるそうです。私たちが知らない水中という環境で、多種多様な魚がそれぞれに合った場所で卵を産み、さまざまな状況の中で育っていくことを教えてくれます。
広い海で小さな魚卵を調査することの難しさや今後の課題についても書かれています。生き物の調査研究に興味のある中高生に特におすすめの本です。残念ながら現在売り切れのため、図書館などで借りて読んでみてください。イクラとタラコとカズノコのプチプチ感のヒミツが分かったら、おいしさも倍増することでしょう。
科学読物研究会 中川僚子