◉1冊目『せかいのひとびと』
世界には実に様々な人々の暮らしがある。体つきも文字も好きな遊びも違う。幸せな人も、意地悪な人も、物乞いも、お金持ちも、ページをめくるごとにぎっしりと描きこまれている。
最後には「だれもがぜんぶ同じだったら 死ぬほどたいくつ」という言葉とともに画一的な街並みと人々が描かれ、次に「ちがっているって すてきでしょ?」という言葉とともに、活気あふれる魅力的な世界が描かれている。
この本は出版されて40年近くになるので、日本を紹介する絵に、時の経過を感じたり、もうこれは行われていないだろうと考えられたりするものもある。新しい版には世界の人口が75億人とあるが、たかだか30年前の古い版には40億人と書かれていた。ものすごいスピードで世界が変わっていることも実感できる。(坂口美佳子)
◉2冊目『もしも原子がみえたなら』
日本では小学校で原子は教わらない。しかし、原子で物事を見るとその事象の理由が、すんなりわかりやすくなる。物は全て原子でできている。だから、たとえ目に見えない物質であろうとも、物質にはすべて重さがある。
この本には、氷が水に浮く理由も載っている。原子の世界へ無理なく子どもたちをいざなう、またとない1冊だ。新版が出て絵も明るく楽しくなった。
★原子ならこの本も
『世界で一番美しい元素図鑑』セオドア・グレイ/著 ニック・マン/写真 若林文高/監修 武井摩利/訳 創元社 2010年 本体価格3800円。
世の中の全ての物を作っている元素を、すばらしい写真で紹介。大人と一緒に楽しみたい本。(坂口美佳子)
◉3冊目『1つぶのおこめ』
数字の「0」を発明したインド。そのインドを舞台にした、美しい絵と痛快なお話による算数の本だ。賢い少女が、王様からのご褒美に、今日はお米を1粒、明日は2粒、明後日は4粒ほしいと願い出た。あっという間に4ページ分に広がるお米、お米・・・。してやられたと後悔する王様。算数の本と身構えずに楽しめる。最後のページには計算方法も載っている。
★算数ならこの本も
『0から100までの数』山崎直美/著 さ・え・ら書房 1997年 本体価格1390円。
100まですべての数字にかかわる楽しい話がぎっしり。毎日1つずつ読む楽しさがある。(坂口美佳子)
◉4冊目『みんなうんち』
子どものペースにあわせて、たった一つの真理をじっくりと説いた本、まさに魅力的な科学の本の条件にぴったり。幼い子どもも好きな「うんち」という響きに引き寄せられて、ページをめくっていくと、さまざまな生物のうんちがリズミカルな言葉で楽しく紹介されていく。
「いきものは たべるから」「みんな うんちをするんだね」最後のページは、高齢者の介護の現場においても、うんちの意味、人間としての尊厳を考えさせてくれる。
★うんちならこの本も
『いもむしのうんち』林長閑/監修 アリス館 1995年 品切れ中。
食べた葉の量と出したうんちの量が一目でわかるページは圧巻。さなぎになる前に出すうんちも載っている。(坂口美佳子)
◉5冊目『はがぬけたらどうするの』
「下向いてはえろ」と唱えながら歯を放り投げた記憶がある人も多いはず。これは日本の風習で、世界ではいろいろな方法がある。
オマーンの子どもたちは、太陽に向かって放り投げ、デンマークでは枕の下に隠す。方法は違っても、いい歯が生えてくることを願う気持ちはどこでも同じだ。
日本を紹介した絵が、どこか日本らしくないのはご愛敬だが、歯が抜けるころの子どもだけでなく、世界の多様性を知る大人にも新たな発見があるはず。(坂口美佳子)
◉6冊目『どうぶつのあしがたずかん』
動物園に行くと情報量が多すぎて、何を見てきたのか、かえって思い出せないことがある。この本は、動物の足型から生態や体の特徴を知ることができる。畳まれたページを開くと子どもの顔3つ分ほどのインドゾウの足型、キリン、ライオン、パンダ・・・14種の動物の実物大の大きな足型が黒々と現れる。思わず足をのせて比べたくなる。動物園で何を見るべきか、ヒントが満載の本。(坂口美佳子)
◉7冊目『チリメンモンスターをさがせ!』
生物の実験は準備が大変だが、この本をガイドに冷凍した教材用のチリメンジャコを取り寄せて使えば、いつでも手軽に、生物の多様性を楽しむことができる。
海の生物の幼生をチリメンモンスターと呼んで、食用になる前の無選別のチリメンジャコの中からさがす。この本はまさに、体験とセットで楽しめるという、よい科学の本の条件にぴったり合っている。
★魚で科学あそびするならこの本も
『煮干しの解剖教室』小林眞理子/文 泉田謙/写真 こばやしちひろ/絵 仮説社 2010年 本体価格1500円。
煮干しはヒトと同じ脊椎動物、共通点を探してみよう。ていねいな解説が助けてくれる。(坂口美佳子)
◉8冊目『魔法使いのABC』
体験とセットで楽しめることは、科学の本のだいご味だ。この本の付録についているミラーシートを使うと、ゆがんだ線と絵がアルファベットとその文字から始まるさまざまな物や動物の絵だとわかる。その文字にまつわる植物もていねいに描きこまれていて、さすが海外で多くの賞を受賞し紫綬褒章も受けた著者の本。同じ著者の『魔法使いのあいうえお』は残念ながら絶版。
★鏡であそぶならこの本も
『きょうのおやつは』わたなべちなつ/さく 福音館書店 2014年 本体価格1500円。
鏡のように映り込むので、丸いホットケーキを焼いて2人でお茶をしているように見える本。(坂口美佳子)
◉9冊目『光の旅かげの旅』
よくあるしかけ絵本とは違うけれど、まんまとその仕掛けにはまって、思わぬ展開に何度もページをひっくり返してしまう。
朝、家を出発してから、街に出て、夜帰宅するまでを、すっきりと大胆な構図が白黒で描かれている。さっきまで見えていた風景や文字と数字が、まるで違って見える不思議に、不意に魔法にかけられた気になる。読み聞かせで紹介すると、借りたい子どものじゃんけん大会が始まる。
★見る楽しさを味わうならこの本も
『視覚ミステリーえほん』ウォルター・ウィック/作 林田康一/訳 あすなろ書房 1999年 本体価格1800円。
表紙からどのページもしかけがいっぱい。本をぐるぐる回して確かめたくなるおしゃれな本。(坂口美佳子)
◉10冊目『ふゆめがっしょうだん』
どのページにも冬になって木の葉が落ちて枝に残った跡がつぎつぎに登場。まるで動物や人の顔のようだ。しかし、春の芽吹きを待つ冬芽と合わせて見ていくとかわいらしい顔に見えてくる。
紹介されている枝は、公園や林で身近にみられる木のものだそうだ。寒くたって、がぜん探しに行きたくなる。リズミカルに歌うような文で楽しい。
★たくさんの植物を楽しむならこの本も
『植物記』埴沙萠/著 福音館書店 1993年 本体価格3300円。
4月1日から12か月、366日、さまざまな植物の営みが美しい写真で紹介されている。お気に入りの写真をみつける楽しみもある。(坂口美佳子)
――「科学道100冊」特設サイトから転載