◉1冊目『ノーベルと爆薬』(玉川大学出版部、2015)
ダイナマイトを発明して巨万の富を築いたスウェーデンの科学者、アルフレッド・ノーベル。ノーベル賞は彼の遺言をもとに創設された。ノーベルは「科学技術は人の役に立つこともあれば、人を傷つけることもある」ということを実感していた。困難を極めたダイナマイトの発明や、ノーベル賞創設までの複雑な道のりを知ることができる伝記。(坂口美佳子)
◉2冊目『星の使者』(徳間書店、1997)
罪を着せられても自分の信念を曲げず、地動説を唱え続けたガリレオ・ガリレイ。この本では美しい絵で彼の生涯をたどり、科学者としての業績をわかりやすくまとめている。
文字の配列がユニークだ。よく見ると望遠鏡、ドーム、星の軌道のかたちになっていて、ページをめくるたび意表を突かれる。眼が不自由になった晩年を紹介するページでは、文字が眼のかたちに並んでいる。まさに絵本の醍醐味を味わえる1冊だ。(坂口美佳子)
◉3冊目『フィボナッチ 自然の中にかくれた数を見つけた人』(さ・え・ら書房、2010)
子どもの頃から数が大好きだった中世イタリアの数学者フィボナッチの生涯を、楽しい絵とともに紹介している。
直前の2項を足すと次の項になるという「フィボナッチ数」は、花びらの数やオウム貝のうずまきなどにも隠れている。
絵本を読んだら自然の中へ飛び出して「フィボナッチ数」を確かめてみてほしい。数や図形に対して無理なく興味を広げてくれる貴重な本だ。(坂口美佳子)
◉4冊目『天動説の絵本』(福音館書店、1979)
昔、大地は平らで動かず、天が動くと信じられていた。宗教と科学との戦いを静かに描きながら、天動説から地動説にいたるまでの長い道のりを紹介している。たくさんの登場人物の中には、ガリレオ、フーコー、マゼランなども描きこまれている。
国内外で数々の賞を受賞している絵本作家・安野光雅さんのすばらしい絵を堪能できるだけでなく、巻末には年表と解説があり、大人の入門書としても十分楽しめる。(坂口美佳子)
◉5冊目『レイチェル・カーソン』(偕成社、1999)
20世紀半ばのアメリカで使われていた農薬には、見逃せない環境への影響があった。レイチェルはそこに含まれる有害な化学物質に気づき、世界に先駆け警鐘を鳴らした。自然を愛する少女が海洋生物学者になり、環境への問題意識を深めていく過程が描かれている。
レイチェルが森の中で子どもたちと話し合っているところなど、貴重な写真も収録されており、彼女の人柄が感じられる。(坂口美佳子)
◉6冊目『世界を変えた50人の女性科学者たち』(創元社、2018)
マリー・キュリーだけじゃない!科学や技術、工学、数学の分野で活躍しながらも歴史の陰に隠れがちだった女性科学者たち。それぞれの生い立ちや業績、驚くような逸話まで見開きで1人ずつ紹介している。
ポップな絵も魅力的だ。歴史年表や実験のための器具、ジェンダーギャップ(男女の違いにより生じるさまざまな格差)についてまとめたページもある。(坂口美佳子)
◉7冊目『世界をうごかした科学者たち 物理学者』(ほるぷ出版、2019)
物理学者ってどんなことしているの?古代ギリシアの科学者アルキメデスから、ニュートン、エジソン、スティーブン・ホーキングまで、30人の物理学者が年代順にコンパクトに紹介されている。
すっきりしたイラストや写真が、子どもたちの理解を深めてくれる。読み進めるうちに、科学は多くの先人たちの積み重ねによって発展してきたことを実感できる。(坂口美佳子)
◉8冊目『日本のスゴイ科学者 29人が教える発見のコツ』(朝日学生新聞社、2019)
ノーベル賞受賞者をはじめ、さまざまな分野で活躍する29人の日本人科学者を取材し、その最先端の研究を紹介している。もとは朝日小学生新聞の連載をまとめたもので、ときには小学生記者が取材を行っている。理化学研究所で113番元素(ニホニウム)を発見した森田浩介先生は「科学者になるために必要なのは、何事に対しても興味をもつこと」とインタビューに答えている。科学を志す子どもたちを勇気づける言葉が散りばめられている1冊だ。
★もっと日本人科学者の仕事が知りたい人は
『「研究室」に行ってみた。』川端裕人/著 筑摩書房 2014年 (Amazon)
サバクトビバッタや、113番元素(ニホニウム)など、6人の科学者の研究を躍動感あふれる文章で紹介している。中高生向けなので親子でどうぞ。(坂口美佳子)
◉9冊目『バーナムの骨』(光村教育図書、2013)
恐竜の中でも子どもたちに不動の人気といえば、ティラノサウルス!その骨を発見して、掘り出した化石ハンター、バーナム・ブラウンの話。子どものころから化石に夢中だったバーナムは、やがてアメリカ自然史博物館にやとわれ、次々に化石を発見していく。
最後のページではバーナムがティラノサウルスにまたがってニューヨークの町中を闊歩する。化石ハンターのワクワクが詰まったノンフィクション絵本。
★恐竜の研究者の仕事場を知りたい人は
『やっぱり・しごとば』鈴木のりたけ/作 ブロンズ新社 2020年
恐竜学者、探検家などの仕事場を臨場感たっぷりのイラストで紹介する楽しい本。恐竜学者の仕事内容や使う道具が詳しく描き込まれていて、見ていて飽きない。(坂口美佳子)
◉10冊目『先生、ウンチとれました』(さ・え・ら書房、2019)
野生動物の出したてホヤホヤのウンチに、とどまるところを知らぬ好奇心を持ち続ける研究者が、世界各地でのフィールド調査の様子を紹介している。
新鮮なウンチから腸内細菌を調べ、動物のカラダの秘密に迫ろうとするが、現地調査は全く思いどおりに進まないことも。読者もハラハラドキドキして、つい応援したくなる。「研究は、とにかく苦労しながらも楽しい!」ということが伝わる本だ。(坂口美佳子)
――「科学道100冊」特設サイトから転載