SDGs? エシカル消費? なに、それ? という感じで、はじめは手に取る気にもならなかった本だ。でもふと開いたページに、目が釘付けになった。「フェアトレードのチョコレートを買おうとしたけど、ほかのより値段が高い。どうしたらいい?」という質問に「無理をしなくてもいいのです」と答えている。自分のできる範囲で、自分が「こうしたい」と考えたときにエシカル商品をえらべばいいのです、というのだ。なんだか急に気が楽になって、本を開いてみた。
私たちは生きていくためにいろいろなものを使っている。食べもの、衣服、エネルギー・・・。それらはもとをただせばすべて自然に由来する、自然からの恵みだ。それらを直接、または加工したりして使い、消費している。原始時代のように人間が少なかったころには地球の自然は無限にあるように思えたかもしれないが、現代ではもちろん、限りがあることはわかっているし、逆に人間の消費は膨大になってきている。そのことがさまざまな環境や社会の問題を引き起こしている。私たちの「消費」は世の中の多くのものとつながっている。そのつながりを知り、どのようにすれば環境や社会の問題を良い方向にしていくのかを考える消費のしかたを「エシカル消費」というらしい。
地球の温暖化、熱帯雨林の開発、児童労働など、現代社会には多くの問題があるが、私たち個人が問題解決のために何かできることがあるだろうか。何もできないと思っていたが、そうではなく一つ大きな力を持っていることに気づいた。それが、「消費」の力だ。
世の中には多くのものが出回っているが、それらはどのように消費者に届くのだろう?地元で作っている有機野菜が近所の店に出ていれば、これは農薬もあまり使ってないし安心して食べられるとわかる。スーパーで売っている季節外の果物などの場合は、地球の裏側のような遠い国で生産され、コンテナに入れられて船で輸送、港からはトラックではるばる運ばれてきている。収穫から何日もかかるため、冷蔵保存のエネルギーや輸送のエネルギーも余計にかかっているはずだ。地元のものを買うということは、それらのエネルギーを削減し、地元の農家の応援になり、仕事を元気づけるだろう。それだけでなく、「私は地元野菜と農家を応援します、農薬や保存料は必要ありません」という意思表示になるのだ。
児童労働など遠くの国の子どもたちの犠牲のもとに生産されたチョコレートが売られているが、そうではない、きちんとした賃金を支払って作られたフェアトレードの品を買うと、生産地の人々の貧富の格差をなくす方向に力が働いていくことだろう。消費者の力が集まれば大きな力となる。しかも、自分の意思を表示する機会として選挙があるが、頻繁にあるわけではないし子どもには選挙権もない。それに対して消費行動は毎日することで、だれでも自分の意思を表すことができる。買い物は未来への投票なのだ。
でも、どの商品が環境に良いのか、社会的に優れているのか、買う段階でわからないことが多い。私たちに代わって商品を検討し、良いものを保証してくれているのがラベル認証だ。商品パッケージを見ると、エコマークなどがついていることがある、そういうものは安心ということだ。
エシカルな消費行動を受けて企業もリサイクル商品を作るようになってきているし、エネルギーも再生エネルギーを利用して CO2の排出実質ゼロを目指す会社やスーパーなども出てきている。今、社会全体が持続可能な方向に向けて動かなくてはならない時なのだ。
国連がよりよい未来を作るために SDG’s(持続可能な開発目標)として 17 の目標を定めた。1.「貧困をなくそう」 2.「飢餓をゼロに」・・・・など、多くの目標が私たちの消費行動に関連している。なかでも 12.「つくる責任 つかう責任」という目標は私たちが何を買い、どのように使うかが大きくかかわってくる。
残念ながらこのシリーズは子どもたちが自分から手に取りやすい本ではない。だからこそ、子どもたちにこの本とその考え方を伝える、周りの大人の力が大切だ。