1969年7月16日アポロ11号は、月に向かって飛び立った。ロケット噴射の強烈な光と、燃料タンクからはがれ落ちたのか、氷のかけらが、見開きのページいっぱいにひろがる。そして、漆黒の空のもと、月面着陸船が砂を吹き飛ばしながらまさに月に着陸しようとしている瞬間の絵は、迫力がある。
ところで、月面からは星が見えない。それはなぜか、その疑問は次のページで解き明かされる。さらにページをめくると、真暗な空を見上げる宇宙飛行士、おそらくアームストロング船長だ。その表情には畏敬の念さえ覚える。星条旗の赤い色が灰色の画面の中で際立っている。次のページ、息をのむような漆黒の闇に青く輝く地球が見える。まるで月面から宇宙飛行士といっしょに見上げている感覚に襲われ、気持ちが高ぶる。
アポロ11号の発射から、月面着陸を経て、地球への帰還までを、すばらしい絵とていねいな説明で紹介している。絵を丹念に見て行くと、3人の宇宙飛行士の顔が、瞳の色と鼻筋で書き分けられていることに気が付く。地球のお茶の間に描かれているテレビもしっかり1960年代のものだ。見返しには、ロケットの構造や月までの経路、タイムスケジュールが細かな絵と共に説明されている。
後ろの見返しには、「人類にとっての大きな跳躍」と題して、ケネディ大統領とアポロ計画、アポロ11号の困難な飛行の状況が約4600字もの圧倒的な文章によって紹介されている。最後に、「アポロ17号が月面を飛び立ったのは1972年12月14日。・・・それ以来、月に行った人間はだれもいません。」と結ばれている。アメリカは巨費を投じてベトナム戦争に介入し、20号まで打ち上げるはずだったアポロ計画を断念したともいわれている。
科学読物研究会 坂口美佳子