地球の約400km上空を、一周90分の猛スピードで回る、重さ450t、サッカー場ほどの巨大な人工衛星は?そう、国際宇宙ステーション(ISS)です。世界の国々が力を合わせる中で、日本は、「きぼう」という名の身軽な服装ですごせる実験室を作りました。今年、土井、星出宇宙飛行士らによって、スペースシャトルで運ばれ、ISSに取付けるようすはテレビなどで見られました。
無重力の「きぼう」で行う重要な実験のひとつに結晶の研究があります。結晶の形には、まわりの温度、濃度、圧力などがかかわるのですが、地上では重力による流れにより、それらを正確に計ることができません。流れの研究にも無重力は必要です。重力が大きいと、重力以外の流れの起こる原因が見つけられないのです。これらは、半導体や薬、食品の開発・製造に役立つ研究です。
実験には、無重力などの特殊な環境が必要ですが、同時に人も暮らせる環境でなければなりません。呼吸をするための酸素を安全に持っていく工夫や、温度の差が300度もある宇宙で、室内の温度を一定にする工夫、また、隕石やこわれた人工衛星の破片「デブリ」で壁に穴があいたりしないよう、防弾チョッキのようなもので防ぐなど、実験棟には宇宙飛行士を守るためのさまざまな工夫が必要です。開発チームの技術者は、水中で無重力に近い状態での訓練をする宇宙飛行士を間近に見るため、水中に潜って一緒に作業をすることもあります。そして、完成してからの試験は準備に1年もかけて行い問題点を解決します。
この本は、小さい頃から機械いじりがだいすきだった、「きぼう」開発チームの一員である技術者が、自分の研究を中心にわかりやすく書いた読み物です。2010年の完成をめざす地球から一つめの“駅”ISS。そこからさらに広い宇宙へ旅をするのが皆さんの時代なのです。
科学読物研究会 津久井優子