「時間て、誰かが決めているものなの?」題名を見て、まず驚きました。そして「はじめに」には、「『1秒』の定義も、時代とともに変化しているのです。」とあります。これまた驚きです。この本にも書いてありますが、たしかに、小学校の低学年で時計の読み方を教わった後は、時計について学ぶ機会というのはなかったと思います。
本書では、時間とは何か?というところから始まり、時計の歴史をふり返っていきます。
人類最初の時計というのは「暦」であり、古代においては、中国の皇帝が「時をも支配する存在」とされていたというように、暦によって天体現象を知ること、予知することは政治に深く関わっていました。しかし、当時の人にとっては、「太陽が出たら起きて働いて、日が沈む前に帰って寝る」という「1日」の単位があれば、十分な生活だったでしょう。
時を経て、時代の権力者が必要に応じて、「1時間」、「1分」、「1秒」まで計れる時計を開発していきます。なぜ、1時間や1分を60に分けたのかというのも不思議ですが、六十進法を使っていた古代バビロニアの影響だといいます。いろいろな数で割りやすいからではないかと。フランスでは、十進法時間を導入しようとしたことがありましたが、メートル法のようには浸透しなかったというのも、それまでの六十進法での1秒の長さが鼓動の拍に近いという感覚的なもののせいではないかといいます。
2章では、最新の原子時計の話になり、内容が難しくなっていきます。が、随所にユーモアを感じさせる文章になっており、「腹時計」はある意味、崩壊現象(砂時計などのように、何かがなくなること)を利用した時計といえなくはないと言ったり、陽イオン・陰イオンの説明に「静電気でくっつくイメージ(下じきと髪とか)」など、モリナガ・ヨウ氏の親しみやすいイラストによる図解もあって、理解しやすくなっています。
3章では、時間計測の精度を求めていくとどのような分野に応用できるかが述べられています。GPSから重力センサー、癌の早期発見など・・。現在の私たちでは想像のつかない応用もあるはずと筆者は言います。
時間を計るということ、それに伴う技術がこんなにも、私たちの身の回りに影響をおよぼしているのかと驚く1冊です。興味があれば中学生にも読めるでしょう。
科学読物研究会 遠藤美子