「うえ向いてはえろ」と唱えながら乳歯を放り投げたことありませんか。これは日本のならわしですね。世界には実にさまざまな風習があります。たとえば、コスタリカでは抜けた歯を金メッキしてイヤリングにしたり、チリでは金や銀の鎖をつけてペンダントにしたり。アメリカのナバホの人々は、歯を持って南東に歩いていって、じょうぶな木をみつけたら、その木の東側に歯を埋めます。東が子どもの方角だからだそうです。ジャマイカでは、歯を缶に入れ一生懸命に振って大きな音をたててこわい牛を追い払ったり、フランスでは枕の下に歯を入れておいて、プレゼントと交換したり。かと思うとドイツではなにもしません。
かわいらしい子どもの絵を見ていると、その国の様子もわかり、世界を旅している気がして楽しくなってきます。日本を紹介した絵が、どこか少し日本らしくないのはご愛敬です。
60以上の国と地域のさまざまな風習が紹介されていますが、抜けた乳歯の始末の仕方は違っても、じょうぶでいい歯が生えてくることを願う気持ちはどこでも変わりありません。本の最後には、歯の中はどうなっているか、口の中でどんな歯がどのように並んでいるか、わかりやすい説明もあります。
乳歯が抜けるころの子どもだけでなく、大人にとっても、世界の多様性を知る新たな発見があるでしょう。
(坂口美佳子)