好評が続くサイエンスシアター・シリーズの一冊。電子レンジは身近な調理器具でありながら原理がわかりにくい。この本は,電子レンジを使って〈とんでもない実験〉をたくさんしながら, 電子レンジの原理がわかっていく本である。
例によって,いくつもの〈問題〉と楽しい討論を中心に話が展開されていく。読者も,予想を立てながら,或いは本と一緒に実験をしながら読み進めることができる。
サイエンスシアターにちなんで3幕の構成となっている。第1幕は「電子レンジとマイクロ波」。「食用油は電子レンジで熱くなるか」,「アルミホイルで包んだ水入りコップを電子レンジに入れると水は熱くなるか」,さあどうでしょう。電子レンジでモノが熱くなる謎は,意外と水分子の形にひそんでいる。第2幕は「電子レンジと自由電子」。 「電子レンジの中にスチールウールを入れると?」「電子レンジの中に蛍光灯を入れると?」と,あやしげな実験で〈自由電子〉の姿が見えてくる。
第3幕は「光線とマイクロ波」。電子レンジはなんと〈マイクロ波〉と呼ばれる〈電波〉を使っているとか。それなら「電子レンジの中にテレビで使うようなミニアンテナを入れると?」,はたしてアンテナに電気が起きるのだろうか? 電子レンジの電磁波がアンテナの自由電子を動かしていれば電気が起きるはず,さて,どうでしょう。
最後に,おはなし「ファラデーの発見物語」がある。〈光は電磁波の一種だ〉と電波の性質を手探りで見つけていったファラデーさんの楽しい発見物語である。
科学読物研究会 西村寿雄