小学生向け伝記シリーズ、科学絵本作家かこさとしさんの生涯を書いた本です。かこさんと言えば、『海』『地球』『宇宙』をはじめ『だるまちゃんとてんぐちゃん』『からすのパンやさん』など、世代を越えて楽しんでいる親子さんも多いことでしょう。92年の生涯に残した作品数は600冊以上。47歳までは工学博士として会社務めもされていたとのこと。その執筆エネルギーはどこからきたのでしょう?
かこさんの青春時代は太平洋戦争の真っただ中でした。本書には、かこさんが自然豊かな福井に生まれ育ち、小学生で上京して中学時代は士官学校を目指していたこと、敗戦後にセツルメント(子ども会)の子どもたちと出逢って、33歳で科学絵本作家となった道のりが書かれています。戦争が、かこさんの人生と執筆活動に強い影響を与えたことがよく分かります。巻末には、かこさんの人柄が5つのエピソードにまとめられています。著者自身のことを知れば、作品の読み方も深まることでしょう。
今年7月、生前に未発表だった作品『秋』(講談社)が出版されました。かこさんの平和を願う思いが込められています。こちらの本もぜひ読んでみてください。
科学読物研究会 中川 僚子