「世界で一番美しい」というタイトルにたがわず、その美しさに目を見張る元素の図鑑です。大判の黒地のページにカラフルな写真の数々は、ゴージャスで、思わずため息が出ます。化学や元素が苦手な人も、一度ページをめくれば、この本の虜になるでしょう。
118の元素が原子番号に沿って、ひとつづつ紹介されています。100パーセント純粋な状態の結晶、日用品や身の回りの物などを、元素のさまざまな姿を写真で見せてくれます。また、気体・液体・固体になる温度が目盛でページの右端に書かれているので、そこだけざっと他の元素とくらべることもできます。性質や発見のエピソードなども簡潔にまとめて紹介されています。
たとえば、キュリー夫人がノーベル化学賞をとったラジウムについては、かつて夜光塗料に使われていて、その労働者の健康被害にかかわる訴訟が、労働訴訟の記念碑的な役割を持っていること、ポロニウムについても、ロシアの元KGB職員の暗殺に使われたこと、キュリウムは、なぜその名をキュリー夫妻にちなんでいるのかなど、社会的な視点からも紹介されています。紹介文の最後は、次の元素につながる話しで締めくくられているので、つい次のページも読みたくなります。
図書館でも、常に借りられているほど人気のある本です。少し値が張りますが、ふんだんに使われているカラー写真の量と美しさに納得がいきます。漢字にルビはふってありませんが、親子で共に楽しむには最適でしょう。手元においておきたい本です。
もう一冊、とてもたのしい周期表の本をご紹介します。『科学キャラクター図鑑 周期表—ゆかいな元素たち!—』(サイモン・バシャー絵 エイドリアン・ディングル文 藤田千枝訳 玉川大学出版部 2009年 1600円)です。おもな54種の元素について、ユニークでかわいらしいキャラクターのイラストと、わかりやすい文で紹介しています。キャラクター好きの子どもたちばかりでなく、おとなための入門書にもなります。キュリー夫妻が発見したラジウムは、暗闇でなぜ青白く光るのか、ラジウムという名前がついた理由も紹介されています。最後にキャラクターがずらっと並んだ周期表もついていて、壁に貼って楽しめます。
科学読物研究会 坂口美佳子