東京国立博物館デザイン室の展示デザイナー、木下史青さんが書いた本です。
博物館の貴重なモノを見せるという視点で書かれているので、あたかも博物館の裏側を覗いているかのような気持ちになれます。博物館の絵画や彫刻、土器や埴輪などと出会う場づくりのためのデザインをする著者は、東京藝術大学で環境造形デザインを学んだのち、照明デザイナーとして「光が空間をつくること」を追求し、さらに「記念撮影したくなる展示風景」を目指しているとのこと。
展示と保存という博物館の仕事から、想像力をはたらかせるといった博物館の楽しみ方、まちに飛び出す博物館やコンビニのような博物館など、進化中の博物館まで、博物館の魅力を語りつくし、巻末で世界のお薦めの博物館も紹介しています。
10代が「自分が自分であろうとする」これからの人生の指針を見つけるのはもちろんのこと、大人も思わず博物館に行ってみたくなります。
最後にある「みなさんにも、お気に入りの博物館で『ぼんやり』過ごす時間や、もし好きな作品やアーティストができたらその作品と一緒の空間を共有することによって、『自分を取りもどしてみる』ことをおすすめする。」という言葉が心に響きます。
科学読物研究会 内田亜紀子