この本を手に取るとまず表紙の写真に目が釘付けになります。切り紙の昆虫たちがなんと生き生きとしていることでしょう。立体的で美しい昆虫たち。
カブトムシ、ショウリョウバッタ、オニヤンマ、アメンボ…と子どもたちに大人気の昆虫をはじめ、全部で25種28タイプの切り紙が収録されています。さぞかし作るのが難しいだろうと思って見てみると、細長い紙を2つに折って、下絵を描いてハサミで切ってひらくだけ。手順が写真入りで丁寧に解説してあります。巻末にはコピーをとって使える型紙も全種類ついています。さっそくコノハムシに挑戦してみました。丁寧に切って、ひらく時のワクワク感がたまりません。一枚の紙を切ったり折ったり曲げたりして、立体的な昆虫が出来上がりました。
この本の魅力はなんといっても昆虫たちのすがたのリアルな美しさです。しかも、美しいだけでなく、昆虫写真家として有名で鋭い観察眼のある、今森さんの切り紙はひと味違います。昆虫の細かな特徴や性質を、切り紙の中に見事にとらえているのです。例えば、ヒトスジシマカはとまる時は「うしろ足をはねあげるようなポーズ」と解説があり、その通りに足をおりまげると本物そっくり。ゲンゴロウが水中を泳ぐ時の、つながった空気のあわも臨場感たっぷり。クワガタだけでも6種類、自分だけの「標本箱」がつくれます。
遊びごころも詰まっていて、ウスバカゲロウやツノトンボは絶妙のバランスでヤジロベエになります。フンコロガシが糞玉を取り合いしていたり、カマキリが台紙から飛び出してきたり、楽しい仕掛けでいっぱいです。「長い口は細いので慎重に」とか、「はねはほんの少しねかせる」とか、作り方のコツもとても参考になります。長い夏休みにあなただけの「昆虫館」をつくってみませんか?
科学読物研究会 市川雅子