題名を読んだだけで、読みたくなりませんか。
この本の冒頭には、著者が数学のおもしろさのとりこになった話が書かれています。第1章「1089は魔法の数字」は、算数マジックの話です。第2章「こうして、幾何にほれこんだ」は、ピタゴラスの定理の話です。第3章「でも、そんなバカなことはないじゃないか」は、シャーロック・ホームズのことから始まって、有名なケーニヒスベルクの橋の問題(一筆書きの問題)についての話です。第4章「代数なんて大嫌い」は、小説『赤と黒』の作者として有名なスタンダールが、たいへんな数学嫌いだったことから始まって、哲学者デカルトの話へとつながり、そして、第5章へ。
この本は、著者の伝記的な内容になっています。その点では、デカルトの『方法序説』と似ています。『方法序説』は、第1章から第4章までがおすすめです。伝記的な内容で、それほどむずかしくはありません。哲学の本だからといっても、必ずしも、難解な本だとは限りませんよ。
本の後半になると、だんだんと現代数学に近づき、カタストロフィー理論やカオス理論やコンピューターの話になります。だんだんとむずかしい話になりますが、わかるところだけ読んで楽しむということも、一つの読書法です。読書は勉強ではありませんから、あくまでも、楽しみとして、楽しみながら読むだけでいいのです。絵や図や写真を見ているだけでも楽しいですよ。この『数学はインドのロープ魔術を解く』は、『方法序説』とは異なり、図や絵や写真がたくさん入っていて、まるで絵本のような感じです。それだけでも、十分におすすめの理由になりますね。
そういう点では、岩波文庫に、もしかしたら、今は品切れになっているかもしれませんが、吉田光由著『塵劫記』もおすすめです。
この本にも、たくさん版画が入っていています。一番大きい数の単位は「無量大数」だと書いてある本だと言えば、みなさんも、きっと、知っていることでしょう。でも、この本が、じつは、算数クイズの本だということは知っていますか。江戸時代の人は、この本で、算数クイズを楽しんでいたのです。楽しみながら、算数や数学が好きになって、得意になれたらいいですね。
科学読物研究会、 根本行雄