■天文現象は日常的に起きている
私たちが夜空を見上げるのはどんな時でしょう?旅先での特別な時間?それとも月食や流星群が見える夜?本書は、私たちが日頃意識していないような身近な天文現象から数百年に1度の天文イベントまで、博物館で天文を担当している著者が語りかけるように教えてくれます。

―今夜はどの星を見る?空を見上げたくなる天文ショーと観察方法の話―
塚田健/著
誠文堂新光社
2023年8月、1800円+税
Chapter(チャプター)1は「太陽の見どころ」。日の出・日の入りにはじまり、黒点やオーロラなど、見開きごとに8つの現象が紹介されています。観察の「チェックポイント」や「楽しみ方」と合わせて、太陽と地球の自然が織りなす風景写真が大きく配置されているところが魅力的。日の出の山並みや雲間から差し込む「天使の梯子」、ダイヤモンドリングなど、ページをめくりながら天文ショーを楽しむことができます。
■天文現象のメカニズムを理解する
チャプター2は「月の見どころ」(16の現象)。月の満ち欠けや月食のことは小学校で学習しますが、そのしくみを図解できる人は多くないかもしれません。
「やさしいイラストでしっかりわかる」シリーズの本書は、オールカラーのシンプルな図とページデザインで、見やすさ・分かりやすさを実現しています。本書の図を見れば、月食のメカニズムはもちろんのこと、中秋の名月の所以や、月の出・月の入りの時刻が毎日約50分ずつ遅くなっていくことも納得がいくでしょう。
チャプター3「惑星の見どころ」(12の現象)では太陽系の惑星が接近したり、並んで見えるランデブー現象や、土星の環の見え方が30年周期で変化することも視覚的に理解できます。
■未来の天文現象を予測する
東西にも南北にも長い日本列島は、同じ日でも場所によって日の出・日の入りの時刻は違ってきます。また、惑星は星座早見盤や星図にないため、狙って観察するためには、計算に基づいたデータが必要です。本書では、「国立天文台暦計算室」や「SpaceX」、「Heavens Above」といった参考Webサイトを多数紹介しています。
地球から火星を見るチャンスは2年2か月に1回。さらに15年から17年に1回、地球と火星が大きく近づく「火星大接近」が起こるとのこと。計算によると、次の火星大接近は2035年の9月11日。また、2039年1月23日と4月2日には、土星の環が消失したように見えることが分かっているそうです。
■予測できない天文現象を待つ
チャプター4「太陽系と小天体の見どころ」(6の現象)では流星を、チャプター5「恒星と星雲・星団の見どころ」(13の現象)では新星と超新星を取り上げています。どれも予測ができない天文現象ですが、「待つのも楽しみ」と著者は言います。
毎年8月中旬に見られる「ペルセウス座流星群」は良く知られています。1月初めの「しぶんぎ座流星群」、12月中旬の「ふたご座流星群」と合わせて3大流星群と言われ、天文雑誌やWebサイトに予報が掲載されます。
一方、新星と超新星は共に星の爆発現象ですが、そのメカニズムは全く違うとのこと。出現を予測するのはほとんと不可能なので、発見されたらできるだけ早く観察することが大切だそうです。
■人類と宇宙
太古の昔から、人は星空を見て方位や季節を知り、七夕伝説や星座の神話を語ってきました。星と星をつないで形を描くことを「アステリズム」と言います。 理科で学習する「夏の大三角」の他にも「春のダイヤモンド」(1等星と2等星と3等星)や、「秋の四辺形」(2等星と3等星)「冬のダイヤモンド」(1等星6個)が紹介されています。
現在、地球の周りには国際宇宙ステーション(ISS)をはじめ、多くの人工衛星が公転しています。ISSは光を放っていないので、肉眼で見るには地上が暗く、かつISSには太陽光が当たっているわずかな時間帯を狙う必要があります。日本付近の上空を通過するタイミングはJAXAのWebサイト「#きぼうを見よう」で調べられるそうです。
各チャプターには「変光星」や「連星」と言った少し踏み込んだ内容も書かれています。ルビはありませんが、小学校高学年くらいから読めます。おとなも子どもも一緒になって、宇宙に繋がる天文現象を楽しめる本です。
(科学読物研究会 中川僚子)
*科学教育研究協議会(科教協)が編集する月刊誌『理科教室』の2024年5月号から、許可を得て転載したものです。
*出版社によるこの本の紹介記事は、下記のURLからご覧いただけます。
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/astronomy/81383/
































