ビーカーくんは人気者、『理科教室』の愛読者ならば、きっと子ども時代に読んでいたであろう『子供の科学』の連載漫画から生まれた。

そのこだわりにはワケがある!実験器具たちのふるさと探訪
ビーカーくんシリーズ
うえたに夫婦/著
誠文堂新光社
2023年6月、3500円+税
ビーカーくんと実験道具たちは、学校の理科室で活き活きしている。これまでのシリーズでは、仲間や先輩を訪ねて、理科教室から飛び出す。大学研究室で行う高度な化学実験を紹介し、実験器具の博物館へ行って先輩たちに会う。そして、今回は実験道具のふるさと探訪、町の工場へ探検に出かける。理科室では身近な存在であるビーカーやリトマス紙、棒温度計、上皿天秤など実験器具がどのように生まれたのか、各メーカーに取材した製造工程が面白い。
工場ではすべて自動化と思いきや、肝心な部分は職人の手によって仕上げをされている。マイクロピペット工場で生まれるピペットにはシリアルナンバーがつけられる。精密検査を受けた後、検査証明が付いて出荷される。この検査員になるためには操作訓練を受けて合格する必要があるという。
ピンセットが生まれる工場では、職人の手作業によって仕上げる工程もある。今はピンセットにQRコードが付いていて修理した回数もわかるようになっているそうだ。様々な種類がある専用ピンセットも見比べるとおもしろい。歯科用、耳鼻科用、外科用など医療現場はもちろんだが、ミジンコ用もあるのだ。
工場見学をした後には、科学技術を楽しむ場所として、東京都北の丸公園の「科学技術館」へ出かける。そして、実験ミュージアムで、ビーカーくんたちは大いに遊ぶ。
スケールの大きい研究場所にも向かう。新たな発電方法を研究する場所「核融合科学研究所」。核融合の原理を説明するのは難しいが、ここでは、イラストや例えが役立つ。プラズマシミュレータ雷神や大型ヘリカル(LHD)、その制御室など、イラストで描かれるからこそ、最先端を俯瞰できる迫力の画面だ。巨大な実験施設カミオカンデの光電子増倍管くんが、ニュートリノのヒミツを教えてくれる。まだまだ現在進行形の研究をする最中であり、今後も注目したい場所だ。
雑誌『子供の科学』は、関東大震災の翌年1924年に創刊号が出た。もうすぐ100年を迎える長寿雑誌だ。創刊号では、海外の鉛筆工場での製造過程を写真入りで紹介している。
雑誌での連載漫画から、さらに取材を重ねて、すべてをカラーで書き下ろし、2022年1月に『ビーカーくんがゆく!工場・博物館・実験施設 そのこだわりにはワケがある! 実験器具たちのふるさと探訪』が出版された。連載当時はスペースの都合上、入れられなかった情報や詳しいイラストが追加されている。内容をよりわかりやすく伝えるためにストーリー構成を練り直して、途中の流れやオチを変える工夫が出来たのも、人気連載ゆえの強みだ。
さらに、今回のワイド版編集は敢えて収録する内容を絞りこんでいる。誰でも読めるようにルビを加え、追加取材した情報も加えた。雑誌連載当時や前作の本と比較すると、より編集した工夫がわかるだろう。
この本の最後におまけとして、うえたに夫妻流取材マンガの描き方「取材の重要ポイント」をイラストで詳しく解説している部分は、実践的で役立つ。おふたりは、取材前の下調べをした上で、質問したいことをリストにしておく。取材のメモを取る方法をわかりやすく図解で説明している。しかも、取材中も移動中やふとしたときにも面白い話が聞ける時を逃さない。気を抜かないところは流石、うえたに夫婦だ。後で見返すときにわかりやすいようにメモをすること、取材後のまとめを早くすること、など実感がこもっている。
この本に登場した工場や研究施設にいた仲間たちが、生まれて初めて、学校の理科室を見学に来る。こうした機会に交流ができるのも『子供の科学』らしい。
いつかビーカーくんとその愉快な仲間たちが、皆さんの学校の理科室に遊びに来るかもしれない。いやいや、すでに学校の理科室で待っているのだ。より正確に、より使いやすく工夫された理科実験器具のヒミツを、学校の理科室でも紹介してほしい。
(科学読物研究会 高宮光江)
*科学教育研究協議会(科教協)が編集する月刊誌『理科教室』の2024年2月号から、許可を得て転載したものです。
*出版社によるこの本の紹介記事は、下記のURLからご覧いただけます。
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/kids/80207/
































