この本は、今までの絵本とはまるで違う不思議な絵本です。ページをめくるたびに、本の奥にも世界が広がって見えます。それは、表面がコーティングされて鏡のように物が写る紙が、見開きの左右に使われているからです。絵本を90度に開いてみると、描かれた絵が鏡のような部分に映りこんで、まるで立体に見えてくるのです。
たとえば、台所のボウルが半分描かれているだけなのに、反対のページにうつりこんで、丸い1つのボウルがあるように見えます。フライパンも、その中で焼けているホットケーキも同じように丸く1つに見えます。そして、焼きあがったホットケーキが乗っているお皿やお茶のカップ、フォークとナイフ、そしてイスが、反対側に映りこんで、相手の分と自分の分と2つあるように見えます。仲良く「いただきま−す」と声を合わせたくなります。
また、本を見るときに、本のどの部分を持つかによって、まるで泡だて器を持っているように見えたり、卵を割っているように見えたりします。
ふくふくといいにおいまで漂ってきそうな臨場感があり、子どもたちに大人気の絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』わかやまけん絵 こぐま社の「やけたかな まあだまだ」ということばまで響いてきそうです。
食べ物の本は人気がありますが、この本は残念ながら読み聞かせには向きません。90度にページを開いてみなければ、鏡のような紙にうつりこまないからです。でも子どもたちに紹介するといつも人気で、すぐに借りたいと何人もが手を挙げてくれます。
同じ作者によるシリーズに『ふしぎな にじ』『かがみのサーカス』もあります。併せて楽しんでください。
科学読物研究会 坂口美佳子