表紙の絵は、未来の月の様子を描いたものです。早ければ小学生の子どもたちが大人になる20年後、遅くとも孫の代になる50年後に実現すると作者は説明します。
この本は、月に基地や工場はなぜ必要なのか、21世紀の真っただ中を生きていく子どもたちに、宇宙開発の必要性と、月をその足掛かりとする意味について、具体的にわかりやすく解説してくれます。そして、宇宙に関わる仕事には、実に様々な分野があること、今日本でくらしている私たちの生活そのものが宇宙探査を支えていることに気づかせてくれます。
実は、人類はもう50年近く月に行っていません。そんな月を理解するために、身近なものを使ったミニ実験が10も紹介されています。例えば、①片栗粉を月の砂・レゴリスにみたてて月面の足跡づくり、②月の表面を覆っている白い石の斜長石さがし、③クレーターの画像を使って月面の新旧調べ、④リンゴの皮をむいて地球の空気の厚さをイメージ、⑤輪ゴムを急に伸ばして、隕石が大気を押して進むと大気が熱くなることを確かめるなど、次々に試してみることができます。
子どもたちは、本を読むという間接体験と、ミニ実験をして確かめるという直接体験を、車の両輪のようにして、さらに宇宙について知識を深め、科学の楽しさを実感することができるでしょう。
開発が進む一方で、現在でも、人類は地球で暮らすことに専念すべきではないかと、宇宙探査の必要性が問われ続けています。なぜならば、宇宙探査には巨額の費用や人命の危険を伴うだけでなく、宇宙ゴミの増加や、地球上の微生物などが宇宙環境を変化させるといったことが懸念されるからです。この本には、宇宙探査は「人類が地球に長く住み続けるために必要な大切な知識をあたえてくれる」とあります。ぜひ大人も一緒に、この本を読んで考えてみてください。
坂口美佳子