科学者たちへのインタビューをまとめた冊子に「子どもの頃、影響を受けた本」という項目があり、『不思議の国のトムキンス』と答えた人が多くいました。
作者ジョージ・ガモフは、著名な理論物理学者です。そして、難解な物理の理論を一般の人にもわかるようにと、本を書きました。
主人公は現代物理学に興味を持つ銀行員のC・G・H・トムキンス(この名前に含まれる基本物理定数!)。物理の講演会を聞きに行きます。講義を聴きながら、夢の中…その夢で見たものは、動いているものが潰れて見える街でした。
トムキンス氏は何度も講義を受けながら、居眠りや転んで脳震盪を起こし、その夢の中で物理を理解していきます。もちろん、トムキンス氏が聞いた講義内容もきちんと書かれいます。
世界の科学者が絶賛した名作ですが、出版後何年も経ち、物理理論の進展もありました。そこでガモフの物語を基に新版が科学解説者のラッセル・スタナードによって書き上げられました。
こうして紹介していますが、実はすべては理解できませんでした。時に楽しく、時に難しくて、トムキンス氏と一緒に居眠りをしながら、読み進めました。教授の講義だけでは読了できないと思える本をトムキンス氏が案内してくれるのです。
興味を持った方は、旧版もぜひ手に取ってみてください。
科学読物研究会 坂下智婦美