有機化学「博物館」ではなく、あえて「美術館」というタイトルに、表紙のリードの最後には「そこは、まるで舞台の上のように不思議で面白い。」とあります。この本は著者の佐藤健太郎さんが個人ホームページ「有機化学美術館」に8年ほどかけて書きためていた中から、美しい分子、面白いエピソードなどを集めたものです。
口絵ページのカラフルな立体構造は今にも動き出しそうですし、さらに不思議なことには、それらからかすかに音楽が聞こえるような感覚を覚えることです。
そう、有機化学の世界は無味乾燥な難しい世界ではなく、造形的に美しい分子があり、それらを追い求める研究者の情熱溢れる世界でもあるのです。
1ページ目から順を追って読み進めるのも、気になる分子のページから開いてみるのも、口絵ページを眺めてみるのも、思いのままに。美術館で美しい絵画や彫刻に親しむように、この本で有機化合物の織りなす造形の世界を楽しんでみてください。
科学読物研究会 二階堂恵理