著者は長年ゴリラの研究に取り組んだ京都大学の前総長。その研究から学び取った人間のあるべき姿を中高生に伝え、生き方を自分で考えてもらおうと書かれた読み物です。「ゴリラとの出会い」「ゴリラから教わったこと」「君たちはどう生きるか?」など 10の章で語られています。
著者は、ゴリラの心の中を知りたいと、26歳でゴリラに会いにアフリカへ行きました。かつてアフリカの人々はゴリラを食べていたのですから、ゴリラにとって人間は絶対の敵でした。そんな中、著者は山に入ってゴリラの集団と出くわしてしまうのですが、意外なことによってこの危機を脱します。それはどんな方法だったのでしょう?
もし、野生のサルと出会ったら決して目を見つめてはいけないと聞いたことがありませんか。見つめてくる人間を敵だと見なして攻撃してくるからでしょう。ゴリラも同じでしょうか?
ゴリラと一緒に生活しながらゴリラを観察すると、ゴリラはしょっちゅうお互いの顔と顔を近距離でつき合わせているそうです。SNSが世界を席巻している今、人間はどれくらい生で顔と顔を突き合わせているでしょう。ゴリラの子育て、オスとメスとの関係、どの章も興味深く、ゴリラの行動を通して、家族という共同体についてたくさんのヒントを教えてくれる本です。
科学読物研究会 坂口美佳子