磁石に鉄がくっつくことは、小さな時から子どもがひきつけられる科学の不思議です。
この本は表紙からさっそく「じしゃく」という題字がねずみをつり上げていて磁石の世界に誘われます。ねずみが落ちてきたらキャッチしようというのでしょうか、女の子がねずみの下に手を差し出しているのもご愛嬌です。
ページをめくると磁石の釣りの遊びで始まります。ぬい針を磁石にする実験をし、その針を使ってコンパスを作り、コンパスが南北を示すのはどうしてかと話をすすめていきます。そこで地球は大きな磁石であることが明かされますが、一方、月ではコンパスが効かないという対比が示され「なぜ地球は磁石なんだろう?他の星はどうだろう?」という次の疑問がわいてきます。
たくさんの科学読み物を手がけてきた著者と画家による場面展開には無理がなく、絵も子どもをひきつける面白さがあります。
また、磁石の中で粒子のS・N極の向きがそろうと磁石になること等が図解されています。
地球のほとんどの場所ではコンパスは北を示すので、山の上、海中、洞窟等いろいろな場所で試してみよう!と、最後は身近な提案で締めくくられます。
その後に付されている解説は、この先が知りたい子どもに向けて、ごくやさしく磁石と電気の切っても切れない関係を紹介しています。
地球の深いところに電気が流れていてそれが地球を磁石にしているのではないかと考えられているのですが、まだ、はっきりと解明されていないそうです。まだ謎が残されているんですね。
磁力も電気も目に見えないものですが、実験を通じて起きることを確かめ、その仕組を想像してみる楽しさを子どもたちと味わってみてはいかがでしょうか。小学校中学年くらい〜。
磁石の本には他に低学年から楽しめる『たしかめてみよう』(ローズ・ワイラー、ジェラルド・エイムズ/ぶん タリバルジス・スチュービズ/え 吉村証子/やく 福音館書店 たのしいかがくあそび)、磁力と大陸移動説の関係も語られる高学年向き『砂鉄とじしゃくのなぞ』(板倉聖宣/著 仮説社 オリジナル入門シリーズ)等があります。いずれも図書館で借りて読むことができます。
科学読物研究会 中野陽子