今の世の中には118種類もの元素があるの?まずこの本のタイトルを見たときに思ったことです。昔習ったときには、天然の元素のウラン(原子番号92)まで、そのほかには長崎に落とされた原爆のプルトニウム(原子番号94)くらいでした、いつのまに10種類以上も増えていたのでしょう。
2015年に理化学研究所で作られ、113番元素と認定されたニホニウムについて丁寧な解説があります。これは粒子加速器を使って、亜鉛(原子番号30)の原子核をビスマス(原子番号83)の原子核に超高速でぶつけ、融合させたのだそうです。確かに、30+83=113で数はあいます、でも実際にそれを合成するには大きな困難があったことでしょう。そのうえ、できてからわずか1000分の2秒後には壊れてしまうのです。このように原子番号の大きな元素はとても寿命が短いものばかりで、実際に作られても実用的な用途には向かないでしょう。でも、この宇宙がビッグバンによって生じた時には、そのものすごい衝撃によってこれらの元素ができていたかもしれないと思うと大きなロマンを感じました。宇宙生成のしくみを解き明かしてくれるかもしれないと期待されているそうです。
本書では一つ一つの元素に関して、その元素の性質、どこに存在するのか、どのような用途に使われているかなどが書かれています。水素、炭素や酸素のようになじみのある元素だけでなく、ほとんど名前しか知らない、いや名前も知らなかったような元素に関してもわれわれ人間はその用途を見出してきたということがよくわかります。身近なものに使われていると知ると、今までなじみが薄かった元素にも、親しみがわいてくるのが不思議ですね。
科学読物研究会 小川真理子