この本は、小学校の理科室でもおなじみのビーカーや試験管から、大学や企業の研究室にあるような、あまり一般の人には知られていないものまで、130を超える実験器具達が、キャラクターになって登場する、その名のとおり「ゆかいな実験器具図鑑」です。器具のひとつひとつに、<ビーカーくん>や<シャーレ男爵>といった呼び名がつけられ、顔が描かれると、何とも親しみやすくかわいいキャラクターに。表紙を見ただけで、子どもたちも、つい手に取って読みたくなることでしょう。でも、かわいいだけではないんです。詳しい器具の情報から安全に関することもしっかり盛り込まれていて、「科学なんて大嫌いだ~!!」という生徒さんから、理科室を使う学校の先生方、理系の皆さんまで、広く読んでいただきたい一冊です。
著者のうえたに夫婦さんは、化学系のメーカーの研究員(当時)で、その専門知識と経験と、かつて絵を描くことが好きな少年だったことが結びついて生まれたのが、<ビーカーくん>をはじめとした実験器具のキャラクターたちでした。昨年の7月、著者が初めて出版したこの本は、科学の本としては珍しく売れ行きが好調で、すでに6刷となっているそうです。『理科教室』の読者の皆さんも、すでにお読みになっている方も多いかもしれません。
図鑑は、器具の用途によって分けられていて、「ビーカーくんとその親戚」「容れるなかまたち」「はかるなかま」「流すなかまと洗うなかま」「熱するなかまと冷やすなかま」「観察するなかま」「電気と磁力のなかま」「実験室のサポーターたち」の、8章から成っています。言葉もやわらかいですね。 各キャラクターの説明では、正式名称(和名・英語名)、特長やポイントの図解や得意技が書かれています。さらに、「2又と名前につくが、恋愛には一途」(2又試験管にいさん)といったキャラ特性や、マニアック度や壊れやすさといった「独断と偏見による」5段階評価も、遊び心がいっぱいで「くすっ」と笑わせてくれます
要所要所に配置されたマンガでは、各キャラクターの関係性や違い、特長が楽しくわかるようになっていて、また、彼らが生き生きと動いたりしゃべったりしている姿は、まるで「オモチャのチャチャチャ」の実験室版のようです。中でも私が好きなのは、夜な夜な集まって「怖い話」をするフラスコ達の話。ある日<三角フラスコくん>が、経験をしたことのないくらい異常な暑さで目が覚め、下を見ると<アルコールランプくん>が・・・(続きは本で読んでくださいね!)。この話は、意外と知らない人も多い内容で、ガラス器具の特性をちゃんと知らないと、うっかりしてしまい、事故にもつながるような危険があることを教えてくれます。
また、合間には、著者の実験時の体験談や器具の話、実験のあるあるネタなどが書かれています。「そうそう!」とか「これは知らなかったー!」など、共感をよぶことでしょう。科学にまつわる10個のコラムは、サイエンスライターの山村紳一郎さんが書かれていて、「ビーカーくんの“超ご先祖様”」「洗う・・・にまつわるあれこれ」など、こちらも楽しく読めます。
科学読物研究会 木甲斐由紀