この本は数々の超能力番組のウソをあばいています。マジック好きな私が眉に唾して見て、推察し、ときには、実際に試したトリックが数多く取り上げられています。単に、暴露・批判しているのではなく、ウソを見抜くポイントが分かりやすく述べられています。超能力や霊能力などの存在を信じている人に、ぜひこの本を読んでほしいです。
TV番組「FBI超能力捜査官」は、本物の捜査官の話かと思いきや、「彼らこそ、現代の救世主か。犯罪大国アメリカにおいて、迷宮入り事件の捜査を請け負う切り札。そんな彼らはこう呼ばれる。『サイキック・インヴェスティゲーターFBI超能力捜査官!』」のナレーションを注意深く聞くと、FBIに所属しているとは言っていないのです。誰かがつけた通称なのです(本文から一部抜粋)。
TV番組はいつも本当のことを伝えているとは限らないのです。特に、危険なのが超能力や霊やUFOについての番組です。TVで放映されているマジックも、トリック撮影や加工編集などしてあるものもあります。ウソにだまされないよう、疑ってみることも必要です。
この本は、父と中学生の娘・その友人の、TV番組を見ての見解・会話方式で書かれています。大人も子ども(小学校高学年程度以上:多くの漢字に振り仮名がついています)も楽しんで読める内容構成になっています。例えば、「手をふれずに念力で方位磁針を動かす男」では、番組では彼がまるで超能力者であるかのような内容になっていますが、なぜ 方位磁針でなければいけなのか、なぜ、他の出演者の手をだけでは動かないのに、彼が近づくとなぜ動くのか注意深く見・考えると、小学生でもそのトリックが分かるはずだと書かれています。
今、一見科学のようで、実は科学でない“ニセ科学”が流行しています。知識の伝授だけにウエートをおくのではなく、考える手段・方法を伝える科学教育が必要です。この本は、観察力や推理力を養うのに大いに役立つでしょう。
帯に、博識な俳優・タレント松尾貴史氏の絶賛の評が書かれていました。「これは発覚!ないない事件だ。超常現象を偏愛する私にとってこんな痛快な読み物はありません。1億総オカルト化のこの国を救う1冊であることは間違いないでしょう!」と。
(『理科教室』2008年2月号掲載)
科学読物研究会&青森・板柳町少年少女発明クラブ、野呂茂樹