「感染症」について、しっかりとていねいに書かれた本です。対象は中学生以上で すが、大人のための入門書になります。新型コロナウイルスの流行に合わせて重版さ れました。
『人類 vs 感染症』岩波ジュニア新書491 岡田晴恵/著 岩波書店 2004年12月
ウイルスや細菌による感染症は、紀元前から人類と共にありました。この本では、 聖書が書かれた時代から差別と共にあったハンセン病、スペインによる新太陸の植民 地化と天然痘、中世ヨーロッパでユダヤ人迫害のもとになったペスト、それぞれの歴 史が紹介され、感染症が人類にどれほど深い傷を負わせてきたのかがわかります。
また、HIV、風疹、麻疹、新型インフルエンザ、スペイン風邪(風邪ではなくインフ ルエンザウイルスによる感染症)にかかる仕組みも説明されています。特に、新型イ ンフルエンザのくだりは、世界が 2020 年 2 月から突き付けられている新型コロナウ イルスの状況と重なり、本が書かれた当時からいっこうに解決されていない問題点に あらためて気づかされます。人口増加、経済格差、気候変動、高速大量輸送システム などが、ますます感染症の環境を悪化させるとのこと、これらを踏まえての若い読者 へのメッセージも説得力があります。
著者は新コロナウイルスの解説で TV でもおなじみ。小学校高学年には同じ著者の 『おしえて!インフルエンザのひ・み・つ』(きしらまゆこ/絵 ポプラ社 2014年 1 月)をどうぞ。ウイルスのしくみや予防法も紹介されています。
執筆者:坂口美佳子 科学読物研究会
