この本は,1996年に行われたサイエンスシアター「力と運動」の第4巻である。『アーチの力学』(2004,8),『吹き矢の力学』(2005,1),『衝突の力学』(2005,6)に続く。
「回転力=トルクと重心」の話から始まる。「実用的な運動はたいてい回転運動」ととらえ,回転と力の関係,トルクの概念を実験を交えながら解説する。楽しいコマの話もある。「バネもない,心棒もないコマ」もある。どんなコマだろうか。「日本人は世界一のコマ好き?」というお話はおもしろい。コマと言えばドングリゴマがよく取り扱われる。しかし,ドングリゴマはよくまわるコマなのだろうか。実験を交えながら〈よくまわるコマ〉の条件をさぐっていく。〈遠心力〉も〈慣性の一つ〉とみればすっきりわかる。最後には,模型のオートバイを使って,「自転車はなぜ倒れないか」を分かりやすく説いている。
このシリーズで著者たちは〈力積〉の概念を強調する。〈動力学〉への新たな橋渡しとしてこの本を読まれることをお薦めしたい。
科学読物研究会 西村寿雄