宇宙飛行士の若田光一さんが宇宙を目指すきっかけとなったのは、アポロ11号だった。1969年にアポロ11号が月面に着陸する様子を生中継で見ていたのだ。当時5歳だった若田少年は、宇宙への憧れを心に秘め、成長していく。
飛行機が好きな若田さんは航空会社に勤めるが、28歳の時、宇宙飛行士の募集を見て、迷いながらもチャレンジを決めた。それは宇宙へのチャレンジの第一歩だった。宇宙飛行士の中でも幅広い仕事を担当する「ミッション・スペシャリスト」の資格に日本人として初めて挑戦し認定された。2009年には、国際宇宙ステーションに長期滞在するミッションに参加する。日本人宇宙飛行士としては最多の宇宙飛行経験者となり、2013年の宇宙飛行では国際宇宙ステーションの船長(コマンダー)にもなった。
日本人宇宙飛行士としての初めてをたくさん体験してきた若田さん。この本を読む人たちにはできるだけ宇宙のこと、宇宙飛行士の仕事のことを紹介したいと、自身の体験を詳細に語っている。宇宙飛行士候補者としての訓練の様子や、2009年の国際宇宙ステーション長期滞在を中心に、宇宙飛行士としての仕事や宇宙での生活を紹介する。ロボットアームを操作し、日本の実験棟「きぼう」を完成させる過程はミッション・スペシャリストとしての能力を最大限に発揮した仕事だろう。
最後のページには、若田さんからのメッセージがある。これから宇宙に行く人も、地球から宇宙を見つめる人にも届けたいメッセージだ。
科学読物研究会 子安伸枝