この本の著者は、トイレにウンコをする意味を真剣に考えた結果、「糞土師(ふんどし)」として40年以上ノグソを続けてきました。食べた命を自然に還すことにつながるからです。
ノグソあとには様々な生き物が集まってきます。最初に飛んでくるのはハエ。次にフン虫がやってきてもぐりこむと、アリがやってきて巣づくりを始めました。
虫の他、イノシシやネズミまで、大小様々な動物がウンコを食べにきます。分解が終わる頃、土のようになった糞土(ふんど)にミミズが現れると、モグラの仲間がやってきました。カビや菌類による分解も進み、においも変化します。また、養分を求めて木の根がのびてくる様子や、芽生えも観察でき、13点のウンコのうち10点にはキノコが生えてきました。ウンコは、次の新しい生命にかわる大切な役割を発揮していたのです。
江戸時代、肥料として使われていたウンコが、化学肥料の普及により、使い道がなくなってしまいました。水洗トイレに流す度、多くの資源とエネルギーを使って処理されている事を忘れてはなりません。
この本では、災害時に活かせる正しいノグソのやり方から、観察の様子についても詳しく紹介しています。また、自然の中でおこる食物連鎖など、生態系のひみつを知ると同時に、人がこれからも自然と共に生きるために何ができるか考えるきっかけを示してくれます。写真とイラストによる解説が豊富で、小学校高学年以上に手にとりやすい読み物です。
科学読物研究会 八木わか菜