私たちが何かを学習し、習得しようとする時のプロセスには、「わかる」(理解する)、「練習する」、「できる」の3つの段階があります。学校において、しばしば、「わかる」の段階を駆け足で通り過ぎたり、はしょってしまったり、そして、いきなり、「練習」が始まり、早く「できる」ようになれとしりを叩かれ(指導され)がちです。しかし、一番最初の「わかる」の段階をしっかりと
味わうことはとても大事なことです。
石原さんは、算数を「わかる」ようにするために、物語をつくるというアイデアを思いつき、実践しています。その成果がこの本です。
「算数・数学は人間の作り出した文化です。ですから、そこには数式や計算を生み出す人間と社会の物語やドラマがあったはずです。
また、それが文化として人々に共有されるまでには長い歴史があったはずです。
ところが、現在の算数・数学はこのような文化的、歴史的要素をすっかりそぎ落として人間味のない空疎で形式的な決まりの体系として子どもに押しつけられることが多いのです。子ども達は算数・数学といえば公式を覚えること、覚えた公式を使って問題を解くことぐらいにしか思っていません。それも入試に必要だからいやいや覚えてやっているのが現状です。
そこで僕は、算数・数学が生み出される時にあったであろう物語をできるだけリアルに再現しようと考えました。」 十進数の話、面積計算の話、円の面積計算の話、比例の話、確率の話、どの話も、とても楽しくて、おもしろいです。
みなさんも、この本を読みながら、ストーリーをもっともっとふくらましてみてください。算数や数学の物語を考えて作ってみてください。きっと、楽しいですよ。
科学読物研究会、 根本行雄