空気は身近にある代表的な物質ですが、透明な無味無臭の気体であるため意識することはほとんどありません。
岩崎書店の調べる学習百科シリーズの一つである本書は、文字通り私たちに密着している「空気」をテーマにした一冊。空気に関する実験の紹介と百科事典的な内容を併せもっています。

第1章「空気って、何だろう?」では、空気の物理特性を理解するための第一歩となりうる9種類の実験が紹介されています。教師が実験を理科的な視点から捉えることは、授業で活用するための一助になります。
実験① 缶をへこませる:空気には力(圧力)があること。一斗缶を使用した実験が実施しにくい場合次の手法でも代用できる。→ホット用のペットボトルに熱湯を1/4程度入れ、キャップをして軍手などを着用しよく振る。その後キャップを開けさっとお湯を捨て素早く締める。しばらくするとペットボトルが凹む。(※火傷に注意が必要。)。この実験はペットボトル内の熱湯からの水蒸気が容器内の空気を押し出した空気のない(水蒸気のみ)状態にするのがポイント。
実験② 空気砲:煙を利用し可視化することで空気の存在や空気が流体であることが理解できる。空気砲から出る“輪”はじっくり観察すると回転している。これは空気が流体でありかつ粘性があることから発生する。
実験③ 空気でキャッチボール:普段感じることはないが空気には重さ(質量)がある。この“重さがある”が重要であり、実験②などと合わせ、空気が“もの(物質)”であることを子ども達に最初に伝えたい。
実験④ 下じき くっついた!?:気圧があること。机と下じきの間にピンとしたシワのない紙・シワのよった紙を入れ、それぞれを比較・考察させる発展的な取り上げ方も可能。
実験⑥ 空気をぬいてみよう:空気を抜くと質量が減り気圧が下がること。気圧を意識させるには気圧計(ほとんどのスマホには気圧センサーが搭載されているため気圧計アプリを利用することも可。ただし本来の使い方ではないので故障の可能性がある)を入れ、数値の変化を見る手法もある。
実験⑦ ぷくっと風船:空気は温めると体積が増えること(温度による体積変化。そもそも気温は空気分子の運動の速さと関係があり、気温が高い=分子が激しく速く運動している状態。気温が低い=ゆっくり運動している。を表している)。
実験⑨ 雲をつくろう:空気の断熱膨張による温度低下によって水蒸気が凝結し雲が発生すること。ヘアスプレーの代わりに線香の煙でも可。実験⑧とセットで行い天気関連の単元で活用することも可能。
第2章「空気って、どんなもの?」では、分子について説明し分子の状態が気温や気体・液体・固体の状態変化に関係していること、また、空気の成分として窒素・酸素・二酸化炭素などが混合していることを図解で紹介しています。
第3章「空気のことをもっと知ろう」では、動物の呼吸・植物の光合成について触れ、原始地球からの大気組成の変化が生物の呼吸と関係があること。また、雲の生成と降水の仕組み・大気圏などの気象分野、さらには、身近な言葉や現象である「真空」「空が青い理由」「大気汚染・地球温暖化などの環境問題」についても取り上げています。
このように、空気や空気が関連している多種多様な事項が取り上げられていますが、大きな特徴は「学習百科」の名の通り、小学校生活科・理科で履修する「空気」が関係する事項がほぼ全て網羅されている点です。小学校では6年間をかけ学年別にさまざまな内容を取り上げます。年齢に応じて少しずつ範囲を広げ、積み重ねていく学習方法でとても効果的ですが、学習した内容それぞれを関連付ける、すなわち科学全体への興味関心を広げることが難しい側面もあります。
実験という親しみやすい手法から導入し「空気」という視点から“小学生のための科学”を具体化している本書。学校図書館に備えれば生徒の興味関心を引き出し、担当教員が手元におけば授業の幅が発展的に広がる有用な一冊です。
(科学読物研究会 遠藤正智)
出版社によるこの本の紹介記事は、下記のURLからご覧いただけます。
https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b613726.html
































