この絵本には、怪人「これできるか」と「のんちゃん」と「ゆうたくん」が登場します。怪人「これできるか」は、いつも、むずかしい体遊びを用意していて、子どもたちを困らせるのが大好きです。
「のんちゃん」は、体遊びが大好きな女の子です。怪人「これできるか」がどんなにむずかしい体遊びを用意していても、すぐにできてしまいます。「ゆうたくん」は、「のんちゃん」となかよしで、体遊びも大好きです。しかし、すぐに緊張して、体が硬くなってしまう癖があります。
今日は、のんちゃんたちの学芸会の日です。ゆうたくんは、緊張のあまり、肩がガチガチになり、せっかくの劇をだいなしにしてしまいます。ゆうたくんはすっかり、落ち込んでしまいます。のんちゃんはゆうたくんをなぐさめ、はげまします。しかし、ゆうたくんは落ち込んだまま。それを見た、怪人「これできるか」は「肩ほぐし」の問題を出します。ゆうたくんは、のんちゃんや怪人「これできるか」に教えられたりしながら、「肩ほぐし遊び」をしているうちに、体も心ものびのびとしてきます。そして、もう一度、劇にチャレンジする勇気が湧いてきます。
この本は、絵本としてのストーリーのおもしろさもよく工夫されていますし、「肩ほぐし」をはじめ、さまざまなヨガ体操がわかりやすく説明されています。また、無理をしたり、間違えたりしないように、注意深く懇切に説明されています。
あとがきのところには、「小さいときから、「無理をしない範囲」とか、「気持ちいい範囲」がどういうことか感じとったり、考えたり、相手に気持ちいいかどうか聞きながらそおっとしたりすることで、自分のことも相手のこともいたわる気持ちを育てる」ことの大事さが指摘されています。私は著者の考えに賛成です。子どものときから、自分の体、友だちの体について、具体的な感覚を通して、その関係性を学ぶことはとても大切なことだと思うからです。理屈でわかることも重要ですが、それ以上に、体で感じることが大切なことであり、それは生きていくうえでの知恵でもあるからです。感受性を豊かに育てていき、思いやりの心もはぐくんでいきたいものだと思います。
科学読物研究会、科学探偵クラブ 根本行雄