構成はいたってシンプルです。見開き2ページの左側にはりんごの状態を表す言葉が、右側にはページいっぱいに1つのりんごのカラー写真が載っています。最初は「りんご つるつる」という言葉と、みずみずしい赤いりんごの写真。次のページには、「りんご じーっと」という言葉の下に「89日」とあります。りんごをそのままずっと置いておいた日数なのです。前のページのりんごの写真と見比べると、赤い皮の輝きだけでなく、張りも失われていることがわかります。
そうです。この本は1つのりんごが腐って分解する様子を、時間の経過を追いながら13見開きに渡って写真で紹介した絵本です。ページをめくって、207日目あたりからは、子どもたちから「えー?」「わー!」「うぉっ」と声が上がります。346日目のりんごは、とうとう意表を突く姿に変わり果てています。そして、ゾウムシの一種が。
りんごのどこがどうなったか、何度も確かめたくて、ページを行きつ戻りつしながらじっくりと楽しむことができる本です。最後のページで5つのりんごの写真を別々に撮り続けたこともわかります。
子どもたちが追いきれない時間の経過を、発見と驚きの中で見せてくれる、科学の絵本の魅力が詰まっています。
『くさる』なかのひろたか/作 福音館書店 1981年6月もあわせてどうぞ。
科学読物研究会 坂口美佳子