表紙には見たこともない生きものの写真があります。白地に黒い縞々もよう、そして白い突起がたくさん出ています。これはハナビラダカラというタカラガイが生きているときの姿だそうです。
この貝は、水中では外套膜で貝殻をすっぽりつつんでしまうので、貝殻はほとんど見えません。タカラガイの貝殻がツヤツヤしているのは、外套膜におおわれていて他の物がくっついたりしないからです。他のタカラガイも、外套膜にある突起や色が様々で見ていてあきません。

ずかんシリーズ
倉持卓司/監修
清水洋美/文
友永たろ/絵
技術評論社
2022年12月、2680円+税
こんなふうに、この本は貝の生きているときの姿を美しい写真とわかりやすいイラストで紹介しています。
第1章は「殻と体にびっくり!な貝」。タカラガイのほかにも外套膜の模様がすごくあざやかなのはシャコガイです。こんな色がついているのは光合成のできる微生物を共生させているからだそうです。マガキガイはギョロ目を持っていて、海で出会ったらびっくりしてしまいそうです。ホラガイは体に硬いふたをくっつけています。口からはえている糸のようなものを使ってえさを食べるツノガイは二枚貝でも巻貝でもない貝です。貝のからだってそれぞれが違っていて、ほんとに不思議だらけです。
第2章は「生き方がびっくり!な貝」。真珠をつくる貝として有名なアコヤガイは、状況に応じてオスになったりメスになったりする雌雄同体。クリオネと呼ばれているハダカカメガイは巻貝の仲間ですが、小さいときは、殻をもっているのに大きくなると失ってしまいます。毒をもっているのは、アンボイナというイモガイの仲間で、サトイモのような殻をもっています。
第3章は「貝殻を捨てた貝」。代表的なのはアメフラシです。外からは見えないけれど体の中に小さな殻をもっています。アメフラシを見たことのある人でも、これが貝の仲間とはちょっと思えません。そして、イカは頭足類だけれどもここに紹介されています。それは、体のつくりを見ると巻貝とよく似ているからです。頭足類は軟体動物という大きなグループに属していて、貝も同じ軟体動物だからです。殻がオウムのくちばしに似ているオウムガイは、名前にカイはついていますが頭足類の仲間です。
第4章は「岩礁や砂浜でおなじみの貝」。海岸でよく見る貝といったら、アサリやサクラガイがなじみがありますが、カラマツガイという貝は肺のような器官をもっていて水の外でも呼吸ができます。また岩礁でよく見かけるヒザラガイは二枚貝でも巻貝でもありません。口の中にある歯舌の先端部が鉄でコーティングされていて磁石を近づけるとくっつくそうです。
第5章は「おいしくてびっくり!な貝」。アワビ、カキ、ホタテ、ハマグリなど、よく食べていてもその体の秘密は知らないことばかりです。こんどから食べるときに観察してみようと思いました。
本の内容をほんの少ししか紹介できなかったのですが、最後にもうひとつ、半透明の体をもっているゾウクラゲというのはクラゲではなく巻貝の仲間だということです。名前にカイがついているかだけで判断してはいけないことがわかりました。また、貝の体について、知らないことがいっぱいあると感じました。とにかく「貝」のイメージがすっかり変わってしまい、あらためて「貝」っていったいなんだろうという疑問がわいてしまいました。「はじめに」を書いた監修者の倉持卓司さんは、『「貝」という生物群は、生物学には存在しません』と言っています。人間との長い長いつきあいの間に「貝」という言葉はどんどん広がって使われるようになったのかもしれないなあと思いました。
この本を貝殻のずかんと照らし合わせて見たら、もっと貝のことがよくわかるので手元においておきたい1冊です。同じずかんシリーズはほかに『ずかん プランクトン』『ずかん たね』『ずかん 細菌』『ずかん ウイルス』などがあります。
(科学読物研究会 森裕美子)
*科学教育研究協議会(科教協)が編集する月刊誌『理科教室』の2023年7月号から、許可を得て転載したものです。
*出版社によるこの本の紹介記事は、下記のURLからご覧いただけます。
https://gihyo.jp/book/2022/978-4-297-13238-5
































