静謐、表紙の写真からは、こんな言葉が浮かんできます。ひとしずくの水が、まさにコップに落ちる瞬間をとらえた写真です。ポトンという澄んだ水音と、ゆっくりと静かに広がる水の輪が見えるような気さえします。
この本はどのページを開いても、水のさまざまな表情を美しいカラー写真で伝えてくれます。水の気体・液体・固体、つまり、水蒸気・水・氷の三態変化もクローズアップやコマ撮りの写真で紹介されています。
作者は『視覚ミステリー』(あすなろ書房)や『ミッケ』のシリーズ(小学館)も手掛けていますが、この本は美しい写真を集めただけでなく、科学的な説明もしています。たとえば、露と雲、みぞれと雪の違い、ヤカンの湯気の正体、水面に浮かんだピンのなぞ、ガラス管を這いのぼる水、水の中に落とされた青インクの広がり方など。説明文には、分子や凝結、表面張力など少し難しい言葉も出てきますが、ていねいに説明されているので、親子で話し合いながら好きなところから、読んでみてください。どれも息をのむような写真に見とれた後は、つい自分でも実験したくなります。
まずは、親子で一緒に写真を楽しんでください。そして、今こうしている間も、世界中の水が、太陽の熱と地球の引力でダイナミックに動きまわっていることに思いをはせてください。
科学読物研究会 坂口美佳子