この本は、日本の子どものための科学の本の古典ともいえる本だと思います。絶版なのはたいへん残念ですが、この本に載っている実験が、何冊か新しい卵に関する実験の本に紹介されています。
家庭の冷蔵庫にたいてい買い置きされている卵を使った実験が、いくつも紹介されています。たとえば、自由研究でもよく取り上げられる殻の溶けた「はだかの卵」。食酢につけておくと、自然に殻が溶けて卵かく膜に中身が守られた半透明の卵が出来上がります。どのような酢を使うか、どの程度時間がかかるか、どうすればより実験の経過が見やすいかなど、実験の方法がていねいに書かれているだけでなく、科学的な理由がきちんと説明されています。
また、卵1つで5キログラムの力に耐えられると、写真付きで紹介されているので、この実験を発展させて、私は子ども達と20個の鶏卵を床に並べて、一人ずつ卵の上にそっと乗ってみる実験もしています。
さらに、コロンブスの卵のように尻を割って立てるのではなく、生卵を机の上に立てる実験も紹介されています。実際にやってみると、10個の鶏卵があれば、1〜2個はわりと短時間に立てることができます。低学年の子どもが卵を立てたのを見ると、すべすべしている卵はには立ちやすい卵の条件が列記されています。卵を立てる実験については、『たまごの立つ話』中谷宇吉郎/著 国土社もあわせてどうぞ。
他にも、取り組みやすい塩水に生卵を浮かせて、空気の入っている気室の存在を確認する実験から、少し手間のかかる卵かく膜の浸透圧の実験まで紹介されているので、興味に合わせて実験を始めることができます。ぜひ図書館で借りて楽しんでください。
科学読物研究会 坂口美佳子