◉1冊目『どんぐりかいぎ』
最近、クマが人里近くまで来て人に被害を与えるというニュースをよく聞く。山に食べものが少なくなってきたことが原因の一つと考えられている。そこでヘリコプターで山にどんぐりを運ぶという対策が行われた。しかし、それですべて解決かというと、自然相手にはそう簡単ではない。
この本は、どんぐりの実がたくさんできる「なりどし(成り年)」と「ふなりどし(不成り年)」があるということから、自然のふしぎを垣間見せてくれる。子どもと一緒に読み進めると、かえって大人の方が考えさせられるかもしれない。
どんぐりなら、この本も!『ドングリ<コナラ>の絵本』大久保達弘/編 アヤ井アキコ/絵 農山漁村文化協会 2016年 本体価格2700円。もっと詳しく、どんぐりの名前、里山との関係、どんぐりを食べるイベリコ豚まで紹介。(坂口美佳子)
◉2冊目『びっくりまつぼっくり』
まつぼっくりで実験だ! まつぼっくりを水に入れると、傘が閉じてスマートな「しょんぼり まつぼっくり」になる。次に空き瓶に入れて乾かすと、「びっくり びんづめ まつぼっくり」のできあがり。ペットボトル入りだとなおさらびっくり。まつぼっくりを拾ってきたら、幼い子どももすぐに実験できる。自然を楽しむ第一歩を共に踏み出す相棒になってくれる本。
まつぼっくりなら、この本も!『まつぼっくりノート ひろってふしぎつくってたのしい』いわさゆうこ/作 文化出版局 2001年 本体価格1300円。イラストで、マツ科だけではない50種以上もあるまつぼっくりを紹介。(坂口美佳子)
◉3冊目『きのこ ふわり胞子の舞』
著者は有名な植物生態写真家。きのこの胞子が放出される瞬間を捉えた写真がすばらしく美しい。中でも、雨粒がツチグリの胞子のつまった袋に命中したとたん、中からモフッと胞子が噴き出る写真は圧巻。胞子を放出して一夜で消えてしまうヒトヨタケ、光る胞子の貴重な写真も。家できのこの胞子を見る方法も紹介されている。自宅の書棚に飾っておきたいと思わせるほどの本。
きのこなら、この本も!『森のきのこ』小林路子/作 岩崎書店 1991年 本体価格1400円。80種ほどのきのこの絵はどれも見飽きない。(坂口美佳子)
◉4冊目『おちばのしたをのぞいてみたら…』
虫嫌いな人はびっくりするかもしれない。この本には、約20種の落ち葉を食べる虫など小さな生き物が、クローズアップした鮮明な写真で紹介されている。虫好きな人もここまで詳しく見た人は少ないだろう。毛嫌いせずに、特に、子どもたちはこの本を見てほしい。生物多様性の重要性とかはさておき、ただ自然の驚異を感じて欲しい。今度落ち葉の道を歩くとき、その下にいる生き物に敬意と愛おしさを覚えるかもしれない。
落ち葉なら、この本も!『おちばであそぼう』 ひさかたチャイルド 2017年 本体価格1300円。落ち葉で思いっきり遊びたくなったら。
『ひろって調べる落ち葉のずかん』 安田守/写真・文 中川重年/監修 岩崎書店 2018年 本体価格3600円。落ち葉の名前を知りたくなったら。(坂口美佳子)
◉5冊目『ひっつき虫観察便利帳 ふしぎが楽しい』
ひっつき虫といっても、植物のタネのこと。かつては、子どもたちがお互いに投げ合ってセーターにつけて遊んだものだ。オナモミ、ヌスビトハギ、イノコズチ、34種それぞれ巧みな方法でくっついて、タネを広範囲に運ばせる。ひっつき虫の必死の作戦を知れば、見る目が変わるかもしれない。
『植物あそび』ながたはるみ/さく 福音館書店1998年 本体価格1600円。ひっつき虫の手裏剣ごっこや、ほかにも身近な草花で遊びたいときは、一年中のたくさんの草花遊びが紹介されている一押しの絵本。(坂口美佳子)
◉6冊目『サツマイモの絵本』
サツマイモが神になってまつられている。そんな神社がある。サツマイモは、たとえ天候不順でも、たくさんとれる。お百姓さん達に、とても感謝されているものなのだ。大きく成長して、たくさん収穫できるように、たとえば葉は、太陽の光をまんべんなくキャッチするため、144度ずつずれて茎についている。根っこは…。これらはサツマイモの生き残るための戦略なのだ。歴史も遊び方も紹介されている。
おいもなら、この本も!『おいもができた』ひさかたチャイルド 2014年 本体価格1200円。おいもほりに行く前後に読むと、体験の厚み増してくれる。(坂口美佳子)
◉7冊目『おこめができた』
新米の季節には、お米の本が見たい。たくさんの本が出版されているが、この本は、幼い子どももわかるように、順を追って写真で稲作を紹介している。見開き4ページ分に黄金色に染まった田んぼの写真は、まさに日本の秋。大人向けの解説も各ページに入って子どもと一緒に楽しめる。
お米なら、この本も!『バケツで実践超豪快イネつくり 1粒のタネが1万粒に!』薄井勝利/監修 農文協/編 農山漁村文化協会 2014年 本体価格1400円。自分でお米を育ててみたくなったら、ていねいな説明のこの本。(坂口美佳子)
◉8冊目『アカトンボの一生』
あかね書房の「新装版科学のアルバム」シリーズの1冊。このシリーズは、何か知りたなったら安心して手に取れる、全73冊のロングセラー。この本には、この頃めっきり見なくなったアキアカネの卵から死までがていねいに紹介されている。トンボのヤゴの育て方、アゴと足の特徴、羽化の仕方なども、写真やイラストと共に紹介されていて、子どもの知りたい気持ちに正面からこたえてくれる。(坂口美佳子)
◉9冊目『にわやこうえんにくるとり』
この絵のタッチに見覚えがある人もいるはず。作者は、科学絵本の傑作の1つ「しっぽのはたらき」をかいた方である。サントリーの新聞広告も担当。この本も大きな美しい絵で、鳥の特徴や生活の様子が丹念に描き込まれている。秋になって実をつけた木があったら、その実を食べにくる鳥に出会えるかも。秋に目立つモズ、カワラヒワ、ムクドリばかりでなく、1年中みられるカラスも紹介されている。(坂口美佳子)
◉10冊目『おべんともって』
幼い子どもは、主人公のこぐまに自分を投影するかもしれない。秋の一日、お父さんにお弁当を届けに行く途中で、ヤマブドウ、カキ、アカトンボ、ドングリ、落ち葉に出会う。秋の自然をゆっくり楽しみながら歩いていき、最後はお土産の赤いもみじを抱えて帰ってくる。子どもを自然の中に連れだすきっかけになる本。
おべんとうなら、この本も!『おべんとうつくろう!』坂本広子/著 まつもときなこ/絵 偕成社 1993年 本体価格1400円。「坂本広子のひとりでクッキング」シリーズは、どれも小学生がひとりで安全に料理ができるように、ていねいに書かれている。(坂口美佳子)
――「科学道100冊」特設サイトから転載