そろそろ気候が暖かくなってくると、今日の気温は何度位かな——そんなとき、にいつもお世話になるのが温度計。温度計の原理はそう難しくないので、大体想像がつくでしょう。
でも、本書の冒頭の「巨大な空気温計」にはびっくり!フラスコにガラス管をつきさして、管の中にゼリーを詰めたというだけの実に簡単な実験なのに、温度の上がり下がりが誰の目にもはっきりとわかってドラマチックです。なにしろ、温度が10℃あがると、管の中のゼリーが1mも飛び上がるのですから。ぜひ、子どもたちとやってみたい気持ちになります。熱による膨張・収縮について、しっかりと理解してくれるでしょう。
残念ながら、こんなに楽しい温度計は実際には使われていません。空気温度計は、大気圧の影響で目盛りが変わってくるからです。そこで、おなじみの水銀温度計やアルコール温度計が工夫されてきました。でも、アルコール温度計の中に入っているのは、本当にアルコール?それならなぜ、100度の目盛りがあるのでしょう?こんな質問にも、ひとつひとつ実験しながら答えてくれます。
温度によって変化するものはなんでも、温度計として使えます。なかでも、温度によって電気抵抗が変化するサーミスタは冷暖房のセンサーや火災警報器などとしても利用されていますし、もちろん、デジタル温度計としても、いろいろな場で使われています。
そのほか、色の変化で温度がわかる液晶温度計や、浮力の変化で計測する<のろま温度計>など、楽しい温度計も紹介されています。
正しい計測は科学的なものの見方への第一歩です。温度をはかる——そのことを通じて小さな科学の目を養っていきましょう。
(「理科教室」2007年5月号掲載)
科学読物研究会、小川真理子