ページを開くとあっと驚く写真に目をみはりました。ある一瞬で静止画像として切り取ったとき、水は驚くべき姿を見せてくれたのです。偶然に撮れたのではなく、周到に狙いすまして撮られた写真の数々は私たちの知らなかった世界。優れた絵本を表現するときに「絵が語っている」と言いますが、この本はまさに「写真が語っている」のです。写真を撮った伊知地国夫さんの天性のセンス、試行錯誤と創意工夫、気の遠くなるような忍耐力に感嘆しました。
冒頭の連続写真は、水を入れた風船を針でついた時、水がどうなるかをつぶさに見せてくれます。また、対比的に並べられた、水滴のミルククラウンとミルクのミルククラウンの写真の美しいこと…。水面をころがる水玉にも好奇心をそそられます。表面張力、毛管現象、気体・液体・固体の水、金属についた霜の成長の様子、霜柱のメカニズム…などと、盛りだくさんの内容ですが、それぞれの項にドンピシャリの写真。さらに、読者が自分のデジカメでも同じような写真を撮ることができるように、カメラから、ライトの向き、背景の色、シャッター速度、ストロボの光らせ方まで丁寧に書いてあります。
「なぜ?」という科学的な疑問には本文やコラムで丁寧にこたえてくれます。本文が、お話仕立てで進んで行くので登場人物と一緒になって試行錯誤しながら興味を持って読み進めていくことが出来ます。好奇心いっぱいで交わされる会話や工夫して水の写真の撮影に挑戦する様子に、読み手もワクワクします。
科学読物研究会 市川雅子