◉1冊目『はじめまして相対性理論』(化学同人、2020)
アインシュタインが提唱した「相対性理論」によると、未来へのタイムトラベルは、理論上では可能である。時間と空間の概念を覆すような相対性理論を理解するのはなかなか難しいが、この絵本ではイラストを使い、やさしく紐解いてくれる。時間や空間、速さ、移動、速さの足し算、光の速さなどの基本知識を押さえた上で相対性理論の説明に入るため、最後まで読み進めることができる。大人の入門書としてもおすすめ。(竹内純子)
◉2冊目『じかんってなあに?』(偕成社、1970)
1秒、1分、1時間が積み重なり、日、週、月、年になっていく。時間は目には見えないが、現在の前には過去があり、現在は未来につながっていく。大人はそれを当たり前のように感じてしまうが、子どもの頃はどうだったのか。この本では、「1秒は絵本をめくるくらいの時間」「時間割は1週間ごとに繰り返される」など、身近な遊びや生活のなかから例を出して、時間とは何かを丁寧に教えてくれる。
時間とは何か、さらに考えたい人は『じかんがどんどん』(ジェームズ・ダンバー/さく せなあいこ/やく 評論社 1999年)を。高い木の枝からリンゴが落ちるのに約2秒、3週間で髪の毛は1センチ伸びるなど、時間の長さを具体的に説明している。リズミカルな調子が楽しい絵本。(竹内純子)
◉3冊目『カエサルくんとカレンダー』(福音館書店、2012)
お母さんから新しいカレンダーをもらった小学生のゆうかちゃん。「なんで2月だけ短いの?」「月によって、日にちの数が違うのはどうして?」。不思議に思っていると、カレンダーから突然、ローマ帝国の将軍カエサルが現れる。
カエサルは太陰暦(月の満ち欠けをもとに月日を定める歴)を廃止し、太陽暦(地球が太陽の周りを回る周期を基にした歴)を採用した張本人。1年365日である根拠や、2月が28日しかない理由、カレンダーの歴史など、愉快な問答をしながら教えてくれる。(竹内純子)
◉4冊目『ながーい5ふん みじかい5ふん』(光村教育図書、2019)
「あと5分寝かせて」「お風呂に5分も浸かるなんて、のぼせちゃう」。子どもの身の回りにある、いろいろな5分を描いた絵本。
たとえば遊園地で遊んでいる時間はあっという間に過ぎるのに、順番を待っている時間や歯医者さんでの治療時間はとても長く感じる。5分はいつでも同じはずなのに、心が感じる時間は状況によって伸び縮みする。日常のシーンを手掛かりに時間の不思議を考える1冊。(竹内純子)
◉5冊目『時間のコレクション』(フレーベル館、2010)
同じ場所にカメラを置き、昆虫や植物、雑木林や空の変化を定点観測した写真絵本。たとえば直径1㎜ほどのナミアゲハの卵が成虫に変態していくまでを37枚の写真で見せてくれる。
1枚の写真は一瞬の切り取りでしかないけれど、並べてみるとそこに流れる時間が見えてくる。誕生の時間、変身の時間、芽吹きの時間などが取り上げられていて、まさに「時間のコレクション」というタイトルがぴったりだ。(竹内純子)
◉6冊目『時間の森〜屋久島』(そうえん社、2008)
ページいっぱいに広がる屋久島の森を見ると、まるでそこにいるかような気持ちになれる。この森には悠久の時が流れている。種が芽吹き、生をまっとうして倒れた木が土に還り、また新しい命が始まる。樹齢7200年を超える縄文杉は、どれほどたくさんの生と死の連鎖を見つめてきたのだろうか。ここに息づく命を守っていくために、人間のありかたも問われている。
屋久島の時間をもっと感じたくなった人は『わたしは樹だ』(松田素子/文 nakaban/絵 アノニマ・スタジオ 2014年)を。縄文杉が自らについて語る、色彩豊かな絵本。「命のつながり」を力強い言葉で伝えている。(竹内純子)
◉7冊目『りんごだんだん』(あすなろ書房、2020)
写真家が1年近くかけて1つのリンゴの変化をカメラにおさめた。89日、151日、227日、322日と過ぎるうちに、ツルツルだったものがしわしわになり、しなしな、ぐんにゃり、ボロボロに……。ページをめくると想像を超えるリンゴの姿が現れる。だがそれらの写真はなぜか美しい。
土から生まれたものが土に還っていく。時間の経過と生命の循環を、新しい形で見せてくれる写真絵本。(竹内純子)
◉8冊目『しゅんかん図鑑』(小学館、2018)
「科学写真家」を名乗る著者が、何十分の1秒、何百分の1秒の瞬間をハイスピードカメラでとらえた貴重な写真絵本。シャボン玉が割れる瞬間、ろうそくの火が消える瞬間、ミルクが1滴落ちる瞬間など、肉眼ではとらえることができない一瞬に何がおきているのかをカメラに収めている。
写真には短い文章がついていて、シャワーの水には「表面張力」が働いている、コップの水がこぼれる瞬間には「慣性の法則」が働いているなど、現象を科学的に解説してくれる。
自分でも瞬間写真を撮りたくなった人は『おどろきの瞬間!? 大図鑑』(伊知地国夫/監修 PHP研究所 2012年)を。驚きの瞬間や、クローズアップ、生き物の動きなどをとらえるための技術が盛りだくさん。現在品切れ中のため、図書館で探してみよう。(竹内純子)
◉9冊目『絵ときゾウの時間とネズミの時間』(福音館書店、1994)
ベストセラーの新書『ゾウの時間ネズミの時間』(本川達雄/著)がわかりやすい絵本になった。ネズミの寿命は2~3年、ゾウの寿命は60~80年。ところが、一生の間に心臓がうつ回数は、ネズミもゾウも同じ15億回だそうだ。
人間の時間軸で考えるとネズミは短命でかわいそうに思えるが、ネズミは人間とは異なる独自の「時間」を持っている。からだのサイズに応じて、種ごとのペースで生きていることをやさしく教えてくれる。(竹内純子)
◉10冊目『せいめいのれきし』(岩波書店、2015)
銀河系の始まりから現在まで続く命のリレーを劇場仕立てで描いたベストセラー絵本。初版がアメリカで刊行されたのは約50年前の1962年だ(日本語版は1964年に発行)。
火の玉から地球が形成され、生命が誕生し、植物が増殖し、恐竜が繁栄・絶滅し、やがて人間が登場した。最後のページに書かれているのは、子どもたち一人ひとりがこれからの話の主人公だというメッセージ。私たちに流れ込んでいる「生命の歴史」を、時代を超えて伝えていきたい。
『せいめいのれきし』をもっと深堀りしたい人は『深読み!絵本「せいめいのれきし」』(真鍋真/著 岩波書店 2017年)を。「せいめいのれきし」に描かれた仕掛けを読み解きながら、学術的にも重要なポイントや新しい知見を紹介してくれる本。ぜひ絵本と併せて読んでほしい。(竹内純子)
――「科学道100冊」特設サイトから転載