『ソロモンの指輪』の翻訳でも有名な動物行動学者、日髙敏隆氏の半年間の講義を収録した読み物です。教科書的なキマリごとではなく、「人間はいかなる生き物か」をテーマに、体のつくり、言語、学習と遺伝、オスとメス、社会とは何か?など、13の講義で構成されています。
毎回の講義では、他の動物との比較や進化の過程をたどりながら、私たち人間がいかに特殊な体のつくりをしているか、言葉を話すとはどういうことなのか、人間にとって種の存続とは何かといった問題まで、気が付かないうちに、生態学、動物行動学、言語学、認知科学の世界へと導かれていきます。そして、しばしば「本当にそうなのかな?」とドキドキさせたり、「なぜだかはまだ分かっていない」とワクワクさせてくれます。
日髙先生の平易な語り口をそのまま文字にした本書は、実際の講義を受けているよう。文系・理系を問わず、中学生くらいからスラスラと読めます。13の講義を読み通せば、歴史的存在としての自分、社会の一員としての自分を感じられるでしょう。知識を増やすだけでなく、考えることの楽しさと、そのためのヒントを教えてくれる本です。
科学読物研究会 中川僚子