スィッチをおせばパッと電灯がついて明るくなります。電気があるということは、今の生活では、空気がそこにあるのと同じくらい当たり前のこととなっていますが、最近の災害での停電被害などを見聞きするにつけ、あらためて、電気が各家庭にひかれているということが、どんなに素晴らしい科学技術の進歩の賜物であるかを実感します。
この本は題名どおり、電気が発電されて電灯がつくまでの仕組みをやさしく教えてくれています。初版は 1970 年1月。その頃までの日本の発電は水力発電が主でしたから、山にダムを作り、雨水をためて発電するところから始まり、電線を伝わって送られ、町にある各家庭の部屋のスイッチを押すと電灯がともる様子が、工夫された説明図と短い文(全部ひらがな!)で説明されています。そして、電気を起こす力は、水だけではなく、石油や石炭を使った火の力、風や潮の満ち干、温泉や地熱を使った自然の力、また原子力もあるということが紹介されています。
電気の基本原理、電気の本質が実に端的に書かれているので、半世紀を経てもなお読み返されるのでしょう。さすが加古さんと頭が下がります。
最後の見開きページでは、電灯だけではなく、毎日の暮らしの中で電気がどんなふうに便利に使われているかが、電気釜、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、テレビ等いわゆる家電製品のオンパレードで楽しく描かれています。50 年前なので形にレトロ感はありますが、電気の恩恵を享受する幸福感が生き生きと伝わります。半世紀を経ても尚読むに堪える科学絵本です。
(篠田木末)