この本は、「光とはなにか」「なぜ光は速いのか」などの基礎から、光学の世界の最先端の情報まで、非常に広範な話題を、スタートレックやハリーポッターなどのSF小説に登場する技術と対比しながら解説している本です。 特に、音に関心があるSF好きにお薦めの一冊です。
読み進むと、超光速によるテレポーテーション(瞬間移動)や透明人間など、「それって、SFの世界のことでしょ。」と思っていたことが真剣に研究されており、中には既に現実になっているものがあるというのですから、最先端の研究のすごさに驚かされます。例えば、超低温の原子ガス内で、光を自転車並みのスピードに遅くしたり、停止や逆進もできることが確認されています。この技術を応用すれば、現在の光通信技術に比べ、データ処理速度や情報量を飛躍的に増加することができるそうです。
また、「不可視化」と言えば、戦闘機がレーダーで捕捉されないステルス技術は既に一般化していますが、負の屈折率を持つ物質“メタマテリアル”を使って、物を見えなくする技術が現実になりつつあり、もはやハリーポッターの魔法のマントも夢ではありません。更に、物体を迂回するように光波を導けるメタマテリアルの性質は、地震波の進行方向をそらし、人や建物を揺れや津波の被害から守ることに応用できるそうです。
音の最先端技術に驚くと共に、ドラえもんの「どこでもドア」が、いつか現実になるような気さえしてくる本です。
科学読物研究会 藤高信男