里山の自然を丹念に描いた、絵本の形の図鑑です。さらに、著者の体験した楽しい野遊びを紹介しています。植物、昆虫、魚、カタツムリ、地衣類など…20のテーマに分け詳細に描いています。
はじめにある「あぜ道に咲く花」には、見開きでカラスノエンドウ、オランダミミナグサなど10種類を詳細に描き、次のページでは、花のスケッチの仕方を的確に示しています。また、「ブナの森の地衣類」では、ヨコワサルオガセなど10種を描き、地衣類ウォッチングの仕方も説明しています。「人の手入れが育てる、ゆたかな雑木林」では、カブトムシ、クワガタとカミキリムシの仲間を描き、たきぎや炭にするために伐採したクヌギやコナラの「萌芽更新」を取り上げています。
既刊の『野あそびずかん』などに加え、海岸植物や干潟の野鳥も登場、野遊びもより多く紹介されています。「BE-PAL」2004〜2005年掲載に手を入れ、約250種の動植物がゆったりと描かれています。各項目に登場する種類が絞られ、里山観察の入門に適当です。どの季節に里山に出かけても、このテーマをヒントに楽しむことができるでしょう。
フィールドは著者のアトリエのある新潟です。中越大地震を超えて、著者の地元への愛着が強く伝わります。手入れをしながら育てる里山、自然と共に生きる姿がわかります。百年経っても千年経っても楽しい美しいおいしい里山の自然をのこしていきたいと、結ばれています。
科学読物研究会 増本 裕江